南極大陸横断国際犬ぞり隊30周年記念イベント
―世界の人々へのメッセージ:東京宣言―

舟津圭三((株)NIKI HILLsヴィレッジ総支配人)

1990年3月3日、アメリカ、フランス、ソ連(当時)、中国、イギリス、日本の6カ国の6人の冒険家や科学者からなる南極大陸横断国際犬ぞり隊が、ゴールのミールヌイ基地に無事到着しました。220日をかけての南極大陸の横断のゴールでした。その走破距離は6000キロにおよび、南極半島先端から極点経由でボストーク基地、ミールヌイ基地へ抜ける、南極大陸で最も長い横断ルートへの挑戦でした。あれから30年、南極条約により南極外からの生き物の持ち込みは禁止され、南極大陸内での「犬ぞり」の使用はできなくなり、また我々が通過した南極半島のラルセン棚氷は、すでに大部分が300キロにわたって崩落、消失していることから、犬ぞりを使ってのあの最長横断ルートの走破は、我々の横断隊が、最初で最後ということになってしまいました。

南極大陸横断国際犬ぞり隊ルートマップ

南極半島先端付近のラルセン棚氷(今は崩落して存在しない)

南極半島 ソーラス山

1989年12月11日 南極点到達

地吹雪時のランチタイム

南極探検史の中でも、今やレジェンドの一つになっている国際犬ぞり横断隊ですが、そのメンバー6人が、その横断完遂30周年を日本で祝うことになり、昨年11月4日に東京に集結しました。そこで旧交をあたためるだけではなく、昨今の世情を省み、世界平和について、地球環境問題についてのメッセージを発信できるような集まりにしようということになりました。環境悪化の影響が及びやすい南極・北極地域において、現役で活動している6人が、次世代に対して環境保全と世界平和、チャレンジ精神の重要性を「THINK SOUTH for the next」と名付けたプロジェクトの中でアピールしました。

集まったメンバーは、ウィル・スティーガー(アメリカ)、ジャンルイ・エチエンヌ(フランス)、ビクター・ボヤルスキー(ロシア)、秦大河(中国)、舟津圭三(日本)の6人と横断隊事務局を担当した女性のキャシー・デモール(アメリカ)。外務省、環境省、文部科学省、国立極地研究所、公益財団法人極地研究振興会、朝日新聞社の後援、アウトドア関連のノースフェイス社、ゴアテックス社、広告会社のDACグループの協賛も頂戴できました。一行はまず、舟津が勤める北海道仁木町のNIKI Hills ワイナリーを訪れ、仁木町では地球環境を考えるシンポジウムを開催、人口3500人の小さな田舎町に世界の冒険家・探検家が集まるのは、町の歴史の中で初めてのことでした。東京では、東京国際フォーラム、板橋区の赤塚第2中学校で、南極横断のドキュメンタリー映画上映と仁木町と同様のシンポジウムを行いました。

東京国際フォーラムのイベント。左から、司会者の雨宮塔子氏、ウィル・スティーガー(米国)、ヴィクター・ボヤルスキー(ロシア)、チン・ダホ(中国)、キャシー・デモール(米国)、ジェフ・サマーズ(英国)、舟津圭三(日本)、司会者の村健一氏。

東京国際フォーラムに集まった人たち

これらのイベントでは、30年前の南極横断を振り返ると同時に、今人類が一つになり、我々の前に立ちはだかる、環境問題や世界平和に関する問題を解決しなければ、近い将来、取り返しのつかないことになることを、東京宣言と名付けたステートメントを通して、世界に発信しました。以下が、その東京宣言です。
1989年12月、我々南極大陸横断国際隊は、4,000マイルにおよぶ歴史的な南極大陸横断の中間地点である南極点に到達し、次のメッセージを世界に向けて発信しました。

“地球の子午線がひとつに交わるこの地点から、世界の人々にメッセージを送ります。人はどんな困難な状況においても、国家や文化を越えて共に生きていける。我々南極大陸横断国際隊の精神がよりよい世界の構築への一助となることを心から願います”

以来、我々6人は、南極大陸の環境の悪化が深刻なスピードで進んでいる事実を目の当たりにし、その危機感をそれぞれの立場で発信してきました。30年前に横断したルートの最初の200マイルの大部分の氷は崩落し、海と化しています。我々と同じ横断ルートでの挑戦は、今では不可能となっています。南極点に共に立ってから30年、南極大陸と世界の橋渡し役として、この現状を世界にアピールしようと、南極大陸横断国際隊は、ここに再び集結しました。地球全体の環境に大きな影響を及ぼす極地の氷や海を守るため、今すぐこの現状に目を向け、直ちに行動を起こす時が来ています。

我々は、この先30年、既存のエネルギー源の使用を最少限に抑え、将来必要になるエネルギーを、新しいテクノロジーで創り出すことを、次世代に託します。危機感を抱く若者を応援・激励するとともに、人類の未来を担う彼らに感謝したいです。我々は今日、1997年に採択された京都議定書の重要性をあらためて確認し、2017年のパリ協定を強い意志をもって支持することを表明します。あらゆる手段で二酸化炭素排出の大幅削減を実現するため、世界各国の市民ひとりひとりが方策と独創性を注いで取り組むよう切望します。

というものでした。

門川市長と国際犬ぞり隊メンバー(京都市役所で)

一行は、京都で門川大作・京都市長に面会し、1997年のCOP3の京都議定書の精神が、COP21のパリ協定へ繋がり、現在に至っていることを讃え、市長からは、京都市の環境への取り組みに関しての説明を受けました。

今回の「 THINK SOUTH for the next」プロジェクトを通じて、人類の前に立ちはだかる環境問題に関して、多くの人に関心を持ってもらえました。実施したアンケートでも、何か今日からアクションを起こしたい、一歩踏み出したいというような、前向きの意見を多数いただいた次第です。3月には、中国・秦大河教授の故郷の蘭州市、その後広州、北京でも、中国科学院、中国地理学会の協賛で、日本に引き続き同様のイベントが開催されます。南極大陸横断後30年経った今、その精神が再度世界に広がり、世界中の人々の意識がさらに高まれば、こんな素晴らしいことはありません。

舟津 圭三(ふなつ けいぞう)プロフィール

1956年大阪生まれ。1988年グリーンランド犬ぞり横断後、南極大陸横断国際隊に参加。その後、米国アラスカ州での中長距離犬ぞりレーサーとして活躍。3大長距離犬ぞりレースの全てで新人賞を受賞する。2015年からは北海道仁木町NIKI HILLsビレッジでワイナリーの総支配人を務めながら、野外自然学校の創設を目指している。

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