沿革

history

当法人は1964年(昭和39年)12月に、「極地研究の助成と研究成果の普及を行い学術文化の向上に寄与すること」を目的とする財団法人として認可され、その直後に試験研究法人に認定されました。当法人が発足した1964年は、国家事業として1956年に開始された南極地域観測事業が一時中断されていた時期で、昭和基地は1962年2月から1965年12月まで閉鎖されました。これに先立つ1961年10月、当法人の実質的創設者である地球化学者鳥居鉄也は、ニュージーランドで開催された第5回南極研究科学委員会(SCAR)会合に出席し、その際行われた南極エクスカーションで、ロス海西岸に広がる南極最大の露岩地域ドライバレーを視察しました。

この特異な景観に心を打たれた鳥居は、日本人チームによる調査研究を決意し、米国極地局の支援を得て、1963/64年に第1回調査を実施しました。これを機に、南極国際協同研究への支援、南極観測事業再開やその後の研究を支援する団体として、当法人が1964年に設立されました。ドライバレー地域の調査は、国際的に高い評価を得た1971/75年の日米ニュージーランドによるドライバレ―掘削計画(DVDP)などを経て、1986/87年まで続けられました。

その後、チリやオーストラリアなどの外国の南極観測隊との協同研究プロジェクトの支援、国内外の国際研究集会への研究助成支援、極地研究成果の普及、極地野外活動のための装備品の開発など、さまざまな活動を行なってきました。公益法人制度の改革に伴って2008年12月1日から特殊財団法人となり、新制度による公益財団法人としての要件を満たす準備を始めました。この準備期間中に、砕氷船2代目しらせの竣工(2009年5月)、国立極地研究所の東京都立川市への移転(2009年5月)、国立極地研究所付属南極・北極科学館の開設(2010年5月)という出来事があり、極地研究を発展させる新たな体制が整えられました。

さらに、極地を活用した青少年教育を発展させるために国立極地研究所から、①小中高教員を南極観測隊に同行させて行う南極授業テレビ中継事業、②南極・北極科学館の管理運営事業への協力依頼がありました。そこで公益財団法人への移行に際しては、事業内容を従来の極地研究分野への助成だけではなく、極地の自然観測情報等を活用する教育者への助成、研究及び教育成果の普及、ミュージアムショップの運営まで拡大する構想をまとめ、申請を行いました。その結果、2013年3月19日に内閣総理大臣の認定書の交付を受け、同年4月1日に公益財団法人としての新たな活動を開始しました。

現在の事業は、公益目的事業と収益事業からなります。公益目的事業は、「極地科学の分野における学術文化の向上発展に寄与するため、研究、教育活動の助成と研究教育成果の普及を図る事業」として以下の3事業を実施しています。

・研究助成(応募型):大学院学生を含む若手研究者の支援が中心

・教育助成(応募型):南極から授業を実施する教員の支援が中心

・研究教育の普及啓発活動:書籍・地図の出版、講演会・教室の開催等

収益事業としては、国立極地研究所の南極・北極科学館のミュージアムショップの管理運営と極地観測事業を通じて開発取得した資料やノウハウの提供・技術指導を行っています。

現在、最も力を入れているのは「普及啓発活動」で、さまざまな新しい取り組みを始めています。まず、南極・北極の自然や観光に関心がある一般の人々に南極の真の姿を知ってもらうために、極地で活躍しているさまざまな職種の専門家が講師となる「南極&北極の魅力」講演会シリーズを2015年10月に始めました。日本印刷会館(東京都中央区新富)を会場に現在まで4年間にわたって隔月で開催しています。

次に、南極大陸地図は2003年改訂版の後は改訂版が出ていなかったので、南極研究科学委員会(SCAR)の最新南極デジタルデータベースを用いた1000万分の1の新南極大陸地図(A1サイズ)を作成し、2016年7月に刊行しました。

さらに、会員向け「極地」(年2回発行)を2016年9月発行の第103号から一般向け「南極と北極の総合誌」(オールカラー印刷)として全面的にリニューアルしました。

最近の動きとしては、一昨年、当法人が公益財団法人JKA補助事業に申請しました「地球環境変動を学ぶ南極・北極教室の展開」が採択され、2018年度は小・中学生向け教材として、冊子「南極・北極から学ぶ地球環境変動」、DVD映像「南極と北極から学ぶ地球の温暖化」、南極大陸地図(A2サイズ)、北極域地図(A2サイズ)を新たに作成しました。この事業は本年度も継続が認められ教材の作成と南極・北極教室の開催を同時に進めています。

さらに、本年度は文部科学省の2019年度ユネスコ活動費補助金「SDGs達成の担い手育成(ESD)推進事業」に当法人が申請しました「南極・北極から地球の未来を考えるESD副読本と学習プログラムの開発」が採択され、ワーキンググループを立ち上げ、本格的なESD副読本と学習プログラムの開発を始めています。本事業は南極・北極からグローバルな環境変動を考える取り組みで、小・中学生の「地球の未来像を考える力」と「未解決の問題に挑戦する力」を育むことに大きく貢献できると期待されています。

公益財団法人になって6年が経過しましたが、会員の皆様や極地関連企業のご支援を得て事業は大きく発展しています。これからも南極・北極域での研究・教育活動から得られた成果を青少年教育や社会の発展のために役立てるための努力を進めていきます。ご支援をよろしくお願い申し上げます。