8.2018年版 南極カレンダーの紹介

(公財)日本極地研究振興会では、南極探検・観測の歴史と南極観測事業から得られた研究成果を広く社会に知ってもらうために、探検・観測・研究上の重要な出来事を記載した南極カレンダーを毎年制作しています。
2018年版は、第57次および第58次南極地域観測隊の隊員が撮影した最新の写真を使用して、南極観測隊の活躍と南極の自然の美しさをお届けします。各月の写真のわかりやすい解説記事を掲載しています。ぜひご活用ください。

2018カレンダー表紙 価  格 1部1,000円(税込)
サ イ ズ B3(横364mm 縦515mm)
申込方法 ①日本極地研究振興会HP 
「南極カレンダー」バナーから
oshirase_icon申込みはこちら
②はがきにて
③FAXにて FAX:042-512-5358
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1月:昭和基地に接岸した「しらせ」(撮影:藤原宏章)

第58次南極地域観測隊を乗せた南極観測船・砕氷艦しらせは2016年12月28日(水)に昭和基地の沖合約560mの定着氷に到着し、昭和基地接岸を果たした。「しらせ」は排水量12,650トンで、大型ヘリコプターCH-101を2機搭載し、海氷の厚さが1.5mまでは連続砕氷航行が可能である。それよりもさらに厚い海氷ではラミング航行で進む。ラミング航行とは、船を一旦後退させた後に全速前進で氷に乗り上げ、船の重さで砕氷する方法である。リュツォ・ホルム湾の定着氷縁から昭和基地までの海氷の状況は年々大きく変動しており、第58次隊ではわずか114回のラミングで昭和基地に到達できた。しかし前年の第57次隊では931回のラミングが必要であった。写真は東オングル島の見晴らし岩から2017年2月3日に撮ったシーンで、開水面がかなり広がっている様子が分かる。

2月:ヒナを育てるアデリーペンギン(撮影:笹森映里)

昭和基地周辺で見かけるペンギンはアデリーペンギンとコウテイペンギンの2種類である。アデリーペンギンは体長75cm、体重5kgほどである。繁殖のために毎年10月末に湾の外縁部から海氷上を歩いてルッカリー(集団営巣地)に戻って来る。小石による巣作り、求愛行動、産卵期、抱卵期を経て12月下旬にヒナがかえる。ヒナはふわふわした濃い灰色の産毛(うぶげ)に包まれ、3週間から4週間ほどは巣にとどまって両親から餌をもらう。親は自分のお腹の中にある未消化物を吐き戻し、口移しで餌を与える。ルッカリーはリュツォ・ホルム湾にある小さな島々や南極大陸沿岸部の露岩地域にある。写真は西オングル島西岸の豆島にあるルッカリーで撮影したシーンである。

3月:南極の満月と氷山(撮影:小野数也)

写真はリュツォ・ホルム湾を航行する南極観測船・砕氷艦しらせの甲板から2017年2月11日21時30分に眺めた満月である。地球から月までの距離は約38万kmと遠いので、同時刻ならば世界中どこでも月の形は同じに見えるはずである。しかし日本で見た満月とは少し印象が違う。その理由は、日本ではウサギの耳が右を向いているのに対して、南極では左を向いているからである。ちょうど日本で見る月の形を180度回転した形になっている。南極大陸周辺でよく見かけるテーブル状氷山は、南極大陸をおおう氷床がゆっくりと流れ出し、海に浮かんでできたものである。水面上に現れている氷山は全体の10分の1程度で、水面下に潜った部分は200〜500mの厚さをもつ。

4月:湖底に広がる緑の森(撮影:田邊優貴子)

昭和基地の南方約50kmのスカルブスネス露岩地域には多数の湖があり、湖底には緑の森が広がる。アリ塚に似た山の形をした緑色の物体は国立極地研究所の伊村智教授によって1995年に発見され、「コケボウズ」と命名された。2009年には、同研究所の田邊優貴子准教授により先のとがった円すい状(たけのこ状)のコケボウズも発見された。コケボウズはコケ類を中心に藻類、バクテリア、クマムシなどから成る集合体であり、約1000年かけて60cmぐらいの高さまで成長することがわかってきた。極地という極限下の生態系モデルとして世界的に注目を集めている。第58次南極観測隊は長池の水深約7メートに水中カメラを設置し、通年観測を行った。写真は2017年2月11日にスカルブスネスの長池で撮影された湖底シーンである。

5月:昭和基地の冬の風景(撮影:梅津正道)

昭和基地には現在までに60棟以上、延べ約7,000㎡の建物が建設された。気温マイナス50度、風速60メートルに耐え、少人数で短期間に建設できる建物として、木質パネルを用いたプレハブシステムが開発された。高床式にしてブリザード(極地の猛吹雪)の雪混じりの強風が抜けるようにし、建物の周囲に雪の吹きだまりができない工夫がされている。写真は2016年5月18日に撮られた昭和基地中心部で、右側の灰色の3階建ての建物は管理棟で、食堂、厨房、通信室、診療室などがある。右側手前の赤い建物は発電等で、その奥の黄色の通路でつながっている2棟は居住棟である。手前の黒いドームはインテルサット衛星通信用アンテナ設備である。

6月:昭和基地上空のオーロラ爆発(撮影:石川貴章)

極夜の昭和基地の最大の楽しみはオーロラである。南極のオーロラは南磁軸極(地理的な南極から約11度ずれている)を中心に磁気緯度で約65度から70度のオーロラ帯と呼ばれる緯度帯でよく見られる。昭和基地の磁気緯度は66度なので、南極大陸の中ではオーロラが最もよく現れる場所である。カーテン状のオーロラは夕方から真夜中の時間帯に現れ、時々急に明るくなり、10分程度激しく揺れ動く「オーロラ爆発」が起こる。写真は2016年7月25日の真夜中に起こったオーロラ爆発のシーンである。緑色のオーロラ(高度100km以上の大気中の酸素原子の発光による)の下辺がピンク色になるのがオーロラ爆発の特徴で、きわめて高いエネルギーの電子の流入によって高度90-100kmの大気中の窒素分子が発光したためである。

7月:南極大陸で見たハロー(撮影:源 泰拓)

昭和基地から約40km西方の南極大陸S27地点(標高942m)で2016年10月23日に見られたハロー(内暈とも呼ばれる)。寒冷な南極では空気中の水蒸気は細かい氷晶となって漂う。氷晶は一般に六角柱の形状なのでプリズムとなり、太陽の光が氷晶を透過するときに偏角22度の屈折が起こる。その結果、太陽を中心に22度の円が見える。これがハローである。ハローの一番上の部分と一番下の部分がより明るく見えるが、それぞれ上部タンジェントアーク、下部タンジェントアークと呼ばれる。この部分はハローよりも虹色がはっきりと見える。

8月:厳冬期に現れる極成層圏雲(撮影:藤原宏章)

成層圏は非常に乾燥しているために通常の気象条件では雲は発生しない。しかし南極の冬季は、緯度60度付近を境に極を回る大規模な渦(極渦)が形成され、南極大陸上空の成層圏大気は周囲から孤立し、太陽光があたらないために極渦の内部は放射冷却によって著しく低温となる。成層圏の高度20km付近の気温が−80℃くらいまで下がると、それまでガス状だった大気中の水蒸気や硝酸・硫酸などが粒子化し、雲となる。これが極成層圏雲で、真珠母雲とも呼ばれる。極域成層圏雲の粒子の表面で起こる不均一反応によって塩素分子が生成され、冬季は極渦内に蓄積される。春季に太陽光が戻ってくると、塩素分子は太陽紫外線によって分解し、活性塩素原子となり、オゾンを破壊する。その結果、オゾンホールが形成されることになる。

9月:雪上車海氷ルート設定作業(撮影:笹森映里)

昭和基地がある東オングル島はリュツォ・ホルム湾の入り口近くに位置し、南極大陸からは幅約5 kmのオングル海峡によって隔てられている。リュツォ・ホルム湾東岸の宗谷海岸には氷床に覆われていない露岩地域があちこちにあり、春季になると越冬隊はこれらの露岩地域で地質調査や生物調査を頻繁に実施する。代表的な露岩地域は、昭和基地の南方20kmにあるラングホブデ、50kmにあるスカルブスネス、70kmにあるスカーレンである。昭和基地からこれらの露岩地域までの雪上車走行ルートを設定するために、ドリルで海氷に穴を開けて氷厚を測り、雪に隠れて見えなくなった危険なクラック(亀裂)を避け、旗竿を設置していく。海氷ルート設定作業は調査旅行の安全確保のために毎年慎重に実施される。

10月:みずほ旅行隊の雪上車とオーロラ(撮影:藤原宏章)

みずほ基地は1970年に開設された日本の内陸観測基地で、昭和基地から南東約270kmの位置にある。標高は2244mで、年平均気温は-32.3℃、1985年7月に最低気温-61.9℃が記録された。現在は閉鎖中で、主に昭和基地からドームふじ基地へ行く際の中継基地として使用されている。旅行隊が使用するキャビン型雪上車は大原鉄工所製のSM100S型で、重さは約11トン、大きさは長さ6m、幅3.7mで、後部車室には2人が泊れる二段ベットがついている。2トン積み木製ソリ7台を牽引して時速5~8kmで、外気温-60℃まで走行できる。写真は2016年10月15日にみずほ基地へのルート途中のH128地点(標高1380m)の真夜中のシーンである。

11月:昭和基地にやって来たDROMLAN航空機(撮影:友松岳士)

ドロンイングモードランド航空網(DROMLAN: Dronning Maud Land Air Network)は東南極域の航空機ネットワークのことで、日本を含む東南極に基地を持つ11カ国が共同で設立した。ドロンイングモードランドは東経44度38分から西経20度までの面積250万平方kmにおよぶ広大な地域である。南アフリカのケープタウンからロシアのノボラザレフスカヤ基地までは大型の航空機で人員や物資を運び、そこで小型の航空機に乗り換えて、さらに遠い基地まで移動する。写真は2016年11月5日に給油のためにオングル海峡の氷上滑走路に着陸するシーンで、乗客はロシアの観測隊であった。彼らは昭和基地経由でロシアのプログレス基地まで飛行機で移動し、そこから雪上車で南極大陸の内陸部にあるボストーク基地へ向うとのことで、氷上滑走路を整備したお礼に越冬隊員はたくさんの生鮮食品のプレゼントを受け取った。

12月:日向ぼっこするウェッデルアザラシ(撮影:田邊優貴子)

アザラシの仲間で最も南まで住んでいるのがウエッデルアザラシで、体長は3m、体重は400kgにもなる。南極の初夏の10月に昭和基地近くの海氷上で出産し、1ヵ月半ほど授乳して育てる。子供の成長は速く、授乳期間が終わると母親とともに餌を捕るために海に潜り始める。潜りが得意で、水深400m近くまで潜り浮上する動作を約20分間隔で繰り返す。潜る前に大きく息を吐き出し、負の浮力で沈むように潜るのがアザラシの潜りの特長である。写真は2016年12月26日に、昭和基地の南方50kmにあるスカルブスネス露岩地域の海岸で日向ぼっこするウェッデルアザラシを撮影したものである。

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