シリーズ「日本の南極地域観測事業を支える企業シリーズ」第9回

飛島建設株式会社~昭和基地の夏の建設現場を担う~

第59次南極地域観測隊  夏隊員 近藤一海 インタビュー


昭和基地管理棟前の19広場で

昭和基地では南極の夏に当たる12月から1月の期間に様々な建設作業が実施されます。しかし南極という特殊な場所であるために、建設機械や建設資材は限られており、作業員も建設作業の経験がない南極観測隊員としらせ乗組員に限られます。こうした厳しい制約の下で、安全に作業を進め、短期間に作業を終えるためには綿密な作業工程表の作成と現場の管理が必要になってきます。飛島建設は1994年から、夏の昭和基地の建設作業の「現場監督」役として、毎年観測隊に社員を派遣してきました。第59次南極観測隊には近藤一海さんが参加することになりました。南極に向けて出発する直前に南極に駆ける思いをお聞きしました。

インタビューは平成29年10月19日に国立極地研究所南極観測センターで行いました。

インタビュアー:福西 浩

福西 南極に出発される直前のお忙しい時期にインタビューのために時間を割いてくださりありがとうございます。会社ではどういう仕事をやってこられたのですか。
近藤 建物を作る現場で勤務していました。建設現場は学校や公衆浴場やテナント工事など、いろいろありました。
福西 建設現場は国外にもあるのですか。
近藤 そうです。私は国内だけでしたが、組織として国際支店もあり、アジアで働いている社員もいます。
福西 南極観測隊に参加することになったいきさつを教えてください。
近藤 飛島建設は36次隊(1994/95年)からずっと南極観測隊に社員を派遣しており、社内公募で希望者を募っています。10年前に入社したのですが、入社してすぐに南極観測のことは知りました。それで南極に将来行きたいと思っていたのですが、準備も必要で、最近応募し、行かせてもらうことになりました。
福西 南極に行ってみたいと思った動機は何ですか。
近藤 入社した頃と最近では違うのですが、最近の理由はより難しい環境で仕事をしてみたいということです。国内でいろいろな建物を作った経験から、さらに難しい環境での仕事に魅力を感じるようになりました。南極では自然環境が厳しく、日本から持っていける資材も限られており、建設機械なども限られていますので。

昭和基地での仕事

福西 それでは具体的に昭和基地でやる仕事について紹介して下さい。
近藤 59次隊での主な仕事は56次隊から続いている2階建ての基本観測棟の上棟を行うことです。4年間にわたった工事の集大成になります。そのために例年よりも建築・土木担当隊員の人数が多くなっています。基本観測棟の建物を59次隊で竣工させるためにミサワホームから派遣される3名の隊員が先遣隊として飛行機で11月に昭和基地に入り、パネル組立作業を始めることになっています。私は1か月後に「しらせ」で昭和基地に入り、基本観測棟本体の工事と基本観測棟を運用するために必要な付随設備を作る工事を担当します。

昭和基地に竣工した基本観測棟(屋上は観測器設置用デッキ)

昭和基地に竣工した基本観測棟
福西 それらの工事でどのような点が難しいですか。
近藤 仕事量がものすごく多い割に作業員の人数が少ない点ですね。専門の隊員は5名しかいないので、観測隊の他の部門の応援やしらせ乗組員の支援が必要になります。でもそういった人たちに手伝ってもらうとやはり安全のリスクも出てきます。
福西 建設現場で怪我をさせないための安全対策としてどういうことをされるのですか。
近藤 いろいろな打ち合わせの時に安全講習をやる機会をいただいていますので、そこでどういう危険性があるかというレクチャーをやります。また、しらせ船上でも講習時間をもらっていますので、そこでもいろいろな経験を話します。
福西 最近の昭和基地は夏でもブリザードが来るような天気が時々ありますね。天候に対しても配慮が必要ですね。
近藤 そうですね。ブリザードが夏に何回か来ると聞いたので、その点は十分に考慮したいと思います。ブリザードが来ると強風が吹きますので。
福西 作業の期間が1か月半程度と非常に限られていますが、その点はどうですか。限られた人数で限られた期間で完成させるには綿密な計画が必要だと思うのですが。
近藤 そうですね、作業工程をしっかりと検討し、どのタイミングで誰が何をやるかという工程表を作りました。でも昭和基地に「しらせ」が到着する日や支援してもらえる人数なども未定ですので、昭和基地に着いてから、毎日主要メンバーとの打ち合わせの時間を作って修正していこうと思っています。

昭和基地での作業風景

昭和基地での作業風景

日本での準備作業

福西 南極に行くまでのここ3か月間くらいは準備で忙しかったと思いますが、どんなことをされたのですか。
近藤 大きな建設資材は58次隊ですでに昭和基地に搬入していますので、副資材的な工具や材料について現在越冬中の建築担当隊員とやり取りし、足りないものを調達しました。現在はそれらを梱包して、「しらせ」まで輸送する作業をしています。
福西 その他に訓練はあったのですか。
近藤 いろいろな訓練がありました。会社では監督業だったので、自分の手を動かしってやる仕事はあまりなかったのです。今回は実際に手を動かしてやる訓練がたくさんありました。
福西 それは経験として良かったですか。
近藤 良い経験になりました。普段は管理する側なので実際やると大変だということが身にしみましたね。

南極で見てみたいもの

福西 夏隊はとても忙しく、仕事以外のことをする余裕はほとんどないと思うのですが、南極に行ったからにはこういう体験してみたいというものはありますか。
近藤 オーロラを見てみたいですね。帰りの船で見られるかなとは思うのですが。
福西 そうですね。昭和基地に着いてしまうと白夜なのでオーロラは見えませんが、南極とオーストラリアの間のしらせ船上でオーロラを見るチャンスはありますね。ところで趣味は何ですか。
近藤 ランニングが趣味なので、船の上でもランニングをしようと思っています。
福西 しらせにはもう乗船しましたか。
近藤 まだ打ち合わせで乗船した程度ですが、今週、体験航海に参加するので楽しみにしています。

家族のこと

福西 南極に行かれるに当たってご家族や周りの方の反応はどうですか。
近藤 家族は最初は反対でした。子供がまだ幼稚園と小さいので。
福西 現在は納得してもらったのですね。
近藤 子供はまだ4か月間いなくなるということを理解していないと思います。でも帰ってきてから南極のことを話したいと思っています。
福西 本日はお忙しい中インタビューの時間を作ってくださりありがとうございました。南極での活躍をお祈りいたしております。

近藤一海(こんどう かずみ)プロフィール

飛島建設株式会社に平成20年度入社。施工管理職として主に共同住宅、学校、養護施設、公衆浴場など多用途の建物の現場管理を10年経験。第59次南極地域観測隊に夏隊建築・土木設営担当として参加。

インタビュアー:福西 浩(ふくにし ひろし)

プロフィール

公益財団法人日本極地研究振興会常務理事、東北大学名誉教授。東京大学理学部卒、同理学系大学院博士課程修了、理学博士。南極観測隊に4度参加し、第22次隊夏隊長、第26次隊越冬隊長を務める。専門は地球惑星科学で、地球や惑星のオーロラ現象を研究している。

飛島建設と南極

当社は、大学共同利用機関法人国立極地研究所から要請を受け、平成6年より毎年、日本南極地域観測隊の設営部門(建築・土木)へ技術者の派遣を継続して行っています。観測隊では、建築土木以外の専門分野の方々にも協力してもらい作業を行います。建築土木の技術者に求められるのは、観測隊員が安全に、品質を確保しながら、南極での作業可能な短い期間に効率よく作業し設営計画を完了できるよう現場を監督することです。

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