成蹊学園が取り組むSDGsのためのESD活動

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藤原 均 (成蹊大学 理工学部 教授/ 成蹊学園サステナビリティ教育研究センター 所員)

成蹊学園における環境教育など

成蹊学園(https://www.seikei.ac.jp)では、2018年4月にサステナビリティ教育研究センターを開設し、小学校から中学・高等学校、大学までの連携によって持続可能な社会の担い手を育む教育(Education for Sustainable Development: ESD)を学園ぐるみで進めています。また、世界のユネスコスクールのネットワーク(Associated Schools Project Network: ASPnet)に参画することを目指していますが、これに先立って成蹊大学ではユネスコスクール支援大学間ネットワーク(ASPUnivNet)へ加盟しました。国連が提唱する「持続可能な開発目標 (Sustainable Development Goals: SDGs)」の実現に向けた教育機関としての責任を果たす取り組みが始まっています。

成蹊学園サステナビリティ教育研究センターがある建物 (https://www.seikei.ac.jp/gakuen/esd/)

武蔵野の自然が残る吉祥寺北部に位置する成蹊学園では、実験や観察、校外学習を通じた本物にふれる体験学習が成蹊教育の原点として続けられてきました。例えば、気象観測所における90年にわたる気象観測、「種を蒔き、育て、収穫し、調理し、食べる」という小学校の栽培活動、中学校の「夏の学校」での自然観察教育プログラムなど、成蹊学園では創立当初よりESDの理念につながる教育を実践しています。

成蹊気象観測所(https://www.seikei.ac.jp/obs/index-j.htm)
成蹊での様々な自然学習など

小学校、中学・高等学校、大学をつなぐサステナビリティ教育研究センター(以下、ESDセンター)を開設することによって、こうした教育実践を「見える化」して学園内で共有、発信するとともに、国内外の機関やさまざまな方々との相互交流によってシナジー効果を生み出したいと考えています。

「オーロラと宇宙」シンポジウムと「地球と宇宙」特別授業

実験・観察などによる本物にふれる環境教育は、成蹊学園のESDにおける大きな柱の一つとなっています。2018年12月、成蹊学園と国立極地研究所は、ESD推進において連携し、その協力関係を強化していくための包括的連携協定を締結しました。

https://www.nipr.ac.jp/info/notice/20181219.html http://new.seikei.ac.jp/gakuen/topics/-esd.html

これまで、成蹊大学と国立極地研究所の教員の間には共同研究を通しての交流があったほか、国立極地研究所のご協力のもと、2016年から「オーロラと宇宙」シンポジウムや、小学校での「地球と宇宙」特別授業を毎年2月に実施してきました(2019年はESDセンター主催で実施:https://www.seikei.ac.jp/gakuen/esd/news_topics/2019/05079.html) 特に、2017年の「オーロラと宇宙」シンポジウムでは、南極昭和基地とのインターネット中継を実施し、現地で越冬中の江尻省先生(国立極地研究所・助教)から南極や昭和基地内の様子をリアルタイムでレポートしていただきました。会場にいた小中学生からは、南極の生活や極地の自然などに関するたくさんの質問があり、予定時間をオーバーしての昭和基地とのやり取りとなりました。 2019年は、帰国した江尻先生に成蹊学園にお越しいただき、南極の様々なお話をお聞かせいただいたほか、片岡龍峰先生(国立極地研究所・准教授)から宇宙天気や歴史資料から明らかになった日本で見られたオーロラについて解説していただきました。また、会場には直径4メートルの巨大な4次元地球儀ダジックアースを設置し、地球や惑星のグローバルな環境について、斉藤昭則先生(京都大学理学研究科・准教授)にお話いただきました。

「オーロラと宇宙」シンポジウムの様子

「オーロラと宇宙」シンポジウムの同日、成蹊小学校の5年生約130名を対象として、小学校けやきホールにて「地球と宇宙」特別授業を実施しました。講師は、シンポジウム同様、斉藤先生、片岡先生、江尻先生にお願いし、地球・惑星・宇宙科学について分かりやすくお話いただきました。楽しいペンギンの姿や美しいオーロラなどの普段は見られない画像や動画に、こどもたちは興味津々に見入っていました。

「地球と宇宙」特別授業の様子

「オーロラと宇宙」シンポジウム、「地球と宇宙」特別授業の両方において、国立極地研究所のご協力により、本物の南極の氷にさわってみる機会が得られたほか、実際に南極観測で使用されている防寒具の展示を行うことができました。オーロラや惑星・宇宙科学、極地の自然は、私たちの日常生活とはかけ離れた世界のことではありますが、実は、関係する事柄も多くあります。オーロラや極地の自然をとおして、身の回りの自然をより深く理解し、グローバルな地球環境を考えるきっかけになればと思っています。「オーロラと宇宙」シンポジウム、「地球と宇宙」特別授業は、第一線の研究者をお招きして実施した、本物にふれる成蹊教育の一つと言うことができます。成蹊学園では、これからも国立極地研究所などにご協力いただき、本物にふれる様々な取り組みを実施していきたいと考えています。

藤原 均(ふじわら ひとし)プロフィール

1996年東北大学 大学院理学研究科 地球物理学専攻 博士後期課程終了、博士(理学)。京都造形芸術大学・専任講師、東北大学大学院理学研究科・助手・助教、ロンドン大学ユニバーシティカレッジ・研究員、東北大学大学院理学研究科・准教授を経て、現在は成蹊大学理工学部・教授。 専門は超高層物理学で、コンピュータシミュレーション、北欧に設置 されている欧州非干渉散乱レーダー観測により熱圏・電離圏変動を研究している。

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