小学生と気候変動を学ぶ南極・北極教室

藤原 均 (成蹊大学 理工学部 / 成蹊学園サステナビリティ教育研究センター 教授)

 成蹊学園(小学校、中学・高等学校)では、ユネスコスクールへの加盟申請を行い、現在、ユネスコ本部からの審査結果待ちの状態となっています。ユネスコスクールへの正式加盟に先立って、成蹊大学では、ユネスコスクール支援大学間ネットワークに加盟し、ユネスコスクールの活動や加盟申請支援などを開始しています。2019年10月5日(土)、ユネスコスクール関東ブロック大会が玉川大学にて開催され、成蹊大学では分科会「小学生と気候変動を学ぶ南極・北極教室」を企画・運営いたしました。本分科会では、成蹊小学校児童を対象とした2つの模擬授業を日本極地研究振興会のご協力のもとで実施したほか、ご参加いただいた様々な学校(小学校、中学校、高等学校、大学)の教員の皆様から、環境教育などに関する諸問題についての貴重なご意見をお聞かせいただきました。以下、上記分科会での試みについて簡単にご紹介させていただきます。

1. 分科会趣旨

 世界中の国々が、様々な自然災害の被害を受けていますが、それら自然災害の中には、近年の地球温暖化と深く関わっているものもあります。SDGs目標13にも位置づけられている気候変動への対策は、持続可能な社会実現のための極めて重要な取り組みと言えます。現在や過去の全地球規模の気候変動についての理解は、私たちの未来への大切な指針となります。特に、南極や北極の自然環境を通して、過去の地球環境変動や地球温暖化の仕組みについて、詳細に理解できることが分かってきました。本分科会は、極地の自然を通して「気候変動を知る」ことや、持続可能な生活を実現するために、「南極昭和基地での生活をヒントに普段の私たちの生活を見つめなおす」ことをテーマに、模擬授業、気候変動や温暖化に関わる教材の紹介、今後の地球環境教育等についての意見交換などを目的として実施されました。

2. 分科会スケジュール(13:30-15:30)

南極と気候変動に関する模擬授業、教材などの情報交換、地球環境教育に関する意見交換などを実施しました。(模擬授業は、小学校5・6年生の児童を対象としました)

模擬授業1~南極観測と地球温暖化について(25分)13:30-13:55

  講師:福西浩 先生
    (東北大学名誉教授:第11、17次南極地域観測隊越冬隊員、
    第22次南極地域観測隊夏隊長、第26次南極地域観測隊越冬隊長)

模擬授業2~昭和基地のエコな料理(35分)13:55-14:30

  講師:渡貫淳子 先生(第57次南極地域観測隊越冬隊員・調理隊員)

休憩 25分 (この間、自由に懇談しながら講師の先生方に質問)

意見交換会(35分)

  参加者による情報交換など

3.模擬授業1(南極観測と地球温暖化について)

 はじめに、「南極観測と地球温暖化について」というタイトルで、福西浩先生(東北大学名誉教授)に1つ目の模擬授業をお願いいたしました。短い時間で、南極の自然・気候と地球温暖化についてお話くださいという、かなり無理なお願いをしたにもかかわらず、クイズなどを交えながら大変楽しいお話をお聞かせくださいました。地球温暖化については、難しい内容だったと思いますが、多くの子供たちは大変興味があるとの感想でした。また、ペンギン、オーロラなどの話も好評で、もっと話を聞いてみたいという子供たちが多数いました。

4.模擬授業2(昭和基地のエコな料理)

 1つ目の模擬講義に続いて、「昭和基地のエコな料理」というタイトルで、渡貫淳子先生(第57次南極地域観測隊越冬隊員・調理隊員)に2つ目の模擬授業をお願いいたしました。この授業は、「南極昭和基地での生活をヒントに普段の私たちの生活を見つめなおすこと」に直接関わるものです。昭和基地での食事を軸に、食材の無駄をなくす工夫や、水や排水の制約についてなど、楽しくてためになるお話ばかりでした。子供たちからは、南極でも意外と沢山の料理が食べられることが分かった、水の大切さが分かった、南極の料理を食べてみたい、(ここで紹介していただいたもの以外で)他に昭和基地でどんな料理が出されたのか知りたい、などの感想が寄せられました。

5.意見交換など

 模擬授業の後、休憩を挟んで参加者間で様々な意見・情報交換が行なわれました。この時間の冒頭で、福西先生より、現在、日本極地研究振興会で製作中の副読本(「南極・北極から地球の未来を考えるESD副読本と学習プログラムの開発」事業)についてご紹介いただきました。今回の模擬授業は、上記副読本の内容に沿って実施されたもので、今後の副読本や学習プログラムの開発・更新にも活かされるものと思われます。また、今回の模擬授業は、成蹊学園で取り組んできたホンモノに触れる(体験する)教育の理念のもと、研究者と教育者のコラボレーションによって先端科学の成果を教育の場に持ち込むための試みでもありました。授業を受けた子供たちや会場にいた教員の皆様の反応から、今回の試みはホンモノに触れる(体験する)環境教育として大きな可能性を持つものと確信しております。今後の課題として、算数や国語などの教科の時間に加えて、今回のような模擬授業をどのように設定するか、予算をどう確保するか(低予算での実施方法などが紹介されました)、政治・メディア・企業・研究者・教育者などの連携の在り方などが議論されました。

 末筆ながら、今回の模擬授業で快く講師をお引き受けくださり、大変楽しくためになるお話をお聞かせくださいました福西浩先生、渡貫淳子先生に心より御礼申し上げます。また、本分科会での模擬授業の実施にあたって渡邉研太郎先生にご助力をいただきました。その他、関係者の皆様、分科会参加者の皆様(熱心に耳を傾けてくださった皆様や積極的にご意見を出してくださった皆様)のご協力により、大変有意義な分科会になったと思われます。深く感謝申し上げます。

藤原 均(ふじわら ひとし)プロフィール

1996年東北大学 大学院理学研究科 地球物理学専攻 博士後期課程終了、博士(理学)。京都造形芸術大学・専任講師、東北大学大学院理学研究科・助手・助教、ロンドン大学ユニバーシティカレッジ・研究員、東北大学大学院理学研究科・准教授を経て、現在は成蹊大学理工学部・教授。 専門は超高層物理学で、コンピュータシミュレーション、北欧に設置 されている欧州非干渉散乱レーダー観測により熱圏・電離圏変動を研究している。

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