【LP】方位磁石をもって旅に出よう-応用編-

基礎編では、日本から北極点への旅で、地球は大きな磁石であることがわかりました。
応用編①では、北磁極の発見や北磁極が年々移動していること、
応用編➁では、地球が磁石であるために発生するオーロラを紹介します。
オーロラが見える地域は長い年月の間に変化し、日本でもオーロラが見えた時期がありました。
そして最後のまとめとして、地球が磁石であることにより、地球上の生命が守られてきたことをお伝えします。 

デジタルの地球儀にふれよう
応用編① 磁極の移動

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応用編② 地球の磁場とオーロラ

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こんな画面です

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動画で解説
解説動画

目次
はじめに
応用編①磁極の移動
応用編➁日本でもオーロラが見えた?
まとめ:方位磁石をもった旅

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授業での使い方
教員のみなさまへ

Google Earthの操作は、「プレゼンテーションを開始」をクリックしたあと、「>(矢印)」を押していくだけで、あとは教材がナビゲーションいたします。

この動画は制作者が実際にGoogle Earthを操作しながら、その場面のエピソードなどをはさみながら解説していく動画となっております。 20分前後の解説動画となりますので、そのまま授業で流しながら子どもたちと一緒に操作するという使い方もできますし、 授業準備としてあらかじめ見ていただくような使い方も可能です。

ご不明点等ございましたら、お気軽にお問い合わせください。

発展学習

Google Earth教材内でご紹介している「発展学習」の詳細ページです。
Google Earthをみていなくても理解できるようになっています。
こちらのページをみて興味がでたら、ぜひGoogle Earthの教材ものぞいてみてくださいね

応用編① 磁極の移動北極探検者たちが見つけた磁極の移動
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【発展学習1】アムンセンが見つけた北磁極の位置について
アムンセンが観測した時、北磁極の位置が少しずつ変化した

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アムンセンらはヨアハーブンで越冬中に,北磁極から約50 kmの地点まで船を進め、船の周辺に地磁気観測器を配置し、何回も観測を重ねました。観測するたびに北磁極の位置は変化するので、その平均値をとって北磁極の位置としました。

なぜ、北磁極の位置は変化したのでしょう?

実は、地表から約100km上空に電離層と呼ばれる電気が流れやすい大気層があります。極地ではオーロラがしばしば発生し、電離層に強い電流が流れます。この電流は電磁石のように一時的に磁場を作り出し、これが地球の磁場に加わった結果、磁針が垂直になる場所(北磁極の位置)が少し変化したのです。

南から北へ!

ところで、アムンセンが見つけた北磁極は、ロスが見つけた位置からゆっくりと北へ移動したように見えますが、モデル計算結果は、そうではないことを示しています。磁極はロスが見つけた位置から南に移動し、1860年にカナダ北岸に達した後、反転して北へ移動し、アムンセンが見つけた位置に至ったらしいのです。

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【発展学習2】磁極が移動する理由

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過去400年間の北磁極の移動

ロスやアムンセンの調査の後も、北磁極の調査は続けられ、図中、黄色の四角で示すように、北磁極は年々移動していることがわかりました。

なぜ移動するのだろう?

地球の中心部は固体の鉄でできた内核があり、その外側には高温で融けた鉄がたまった外殻があります。融けた鉄は、外殻内の温度差により発生する対流や、地球の自転の影響により、複雑な流れ方をしています。この流れにより電流が発生し、その電流は電磁石のように磁場を作り出し、地球は大きな磁石となるのです。融けた鉄の流れ方が変化すると、電流の流れも変化し、それが作りだす磁石の向きも変化します。その結果、磁極の位置が移動します。

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応用編➁ 地球の磁場とオーロラ ~ 日本でもオーロラが見えた? ~
【発展学習3】 オーロラはどのようにして起こるのだろう
緯度が高くなると、オーロラが見える

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太平洋を北上する航路がベーリング海峡にさしかかるあたりで、美しいオーロラを見ることができます。図で見るように、オーロラには色々な形があります。光のカーテンが、時には激しく渦を巻き、時には天頂からスカートのように広がります。磁気嵐が起こると、真っ赤なオーロラが見られます。オーロラは、実は地球が大きな磁石であるため、発生したものなのです。

どうしてオーロラがおきるのだろう?

太陽から噴き出される電気を帯びた気体(プラズマ)の流れを太陽風といいます。太陽風は地球の近くまでやってきますが、地球の磁力線を横切ることができず、それを包み込むように、昼側(太陽に面した側)では磁力線を押し縮め、夜側では磁力線を吹流しのように引き伸ばします(図参照)。

太陽風に包まれた、この領域は「磁気圏」と呼ばれ、地球磁場の影響が及ぶ範囲となっています。太陽風と磁気圏の間には一種の発電作用が起こり、発生したエネルギーは磁気圏の中に蓄えられますが、太陽風の状態が変わったりするなどのきっかけで、このエネルギーは解放され、磁気圏夜側のプラズマシートでエネルギーの高い電気を帯びた粒子(オーロラ粒子)が生み出され、地球の方へ送り出されます。オーロラ粒子は磁力線に沿って極地上空の大気に衝突し、大気が発光します。この光がオーロラです。

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【発展学習4】オーロラオーバルとオーロラ帯

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地球全体で見た、或る時刻のオーロラは、磁極を取り囲む卵形をしており(図の左)、「オーロラオーバル」と呼ばれます。図中、黄色の点線で囲んだ領域はオーロラオーバルの真夜中側にあたり、幅広い緯度にわたり明るいオーロラが見えます。地球の自転により、真夜中側のオーロラ発生地域は移りかわってゆきます。そこで、世界地図の上に、明るいオーロラが見えた地域を重ねてゆくとリング状の領域になります(図の右)。このリングを「オーロラ帯」と呼びます。リングの中心は地球という大きな棒磁石の軸(磁軸)が北半球の地表を貫く地点、「北磁軸極」になっています。

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【発展学習5】磁極と磁軸極

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地球の磁場は、簡単には棒磁石(対称性のよい双極子磁場)で表されますが、実際の地球磁場は非対称で歪んだ部分もあり、これをうまく表現するには、複雑な形の磁石を組み合わせたモデル(IGRFモデルなど)を使う必要があります。北半球の磁力線が集中し、磁力線が地面と垂直になる地点を「北磁極といいますが、IGRFモデルを使うと「北磁極」の位置を正しく求めることができます。一方、簡単な棒磁石モデルで求められるのは「北磁軸極」です。北磁軸極の位置は図で見るように、北磁極とは一致しません。 複雑な形の磁石の影響は、地球から離れると急速に小さくなり、数千kmも離れると地球磁場は棒磁石モデルで表せるようになります。

オーロラを光らせるオーロラ粒子の動きは、このような領域の磁場で決まるため、オーロラ帯の形も棒磁石モデルの磁場で決まり、オーロラ帯の中心は「磁軸極になります。

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【発展学習6】過去3000年間のオーロラ帯の移動

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片岡(2021年)がモデル計算で求めた過去3000年間のオーロラ帯の移動の様子を、代表的な6つの時期(紀元前950年、西暦50年、700年、1200年、1800年、2000年)について図示します。図を右上から左下に斜めに横切る線は、西経90度と東経90度の経度線をつないだもので、北磁極の移動経路にあたっています。

オーロラ帯は基本的にこの線に沿うような移動を示し、シベリア中央部に寄ったり(紀元前950年)、カナダ北西部に寄ったり(西暦2000年)を繰り返しています。一方、シベリア東部に寄ったり(西暦1200年)、グリーンランド~イギリス方面に寄った時期もあり(西暦1800年)、前者では日本や中国で、後者ではイギリスで、オーロラが見られたとの古い記録があります。

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【発展学習7】西暦1200年当時の古文書で見るオーロラ

廿一日 天晴 風烈(中略)秉燭以後、北艮方又有赤気、如隔山焼亡、重畳尤可恐

藤原定家『明月記』より引用

21日晴れ、風がつよい(中略) 夕方、北北東の方向に再び赤気が現れた。それは山の向こうに起きた火事のようだった。重ね重ねとても恐ろしい。

西暦1200年の頃、日本や中国でオーロラが見えたことを裏付ける古文書があります。藤原定家の「明月記」には1204年2月と3月、空に赤い光が見えたと書かれており、定家は大磁気嵐時の赤いオーロラを見たと思われます。

また、中国の宋時代の歴史書天文編には、宋時代の300年間(西暦960年~1279年)に200例のオーロラが記載されており、1200年頃は中国や日本でオーロラが見えやすかったことが確認できます(片岡ほか、2017年)。

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一方、1800年にはオーロラ帯がイギリス北部に達しており、この時期、イギリスではオーロラが良く見られたと言われています。このように、オーロラ帯は時代とともに移動し、オーロラが見える場所も変わることを古文書は示しています。

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【発展学習8】関西でも見られた赤いオーロラ

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明和7年(1770年)7月28日、歴史に残る大磁気嵐が発生し、世界各地で赤いオーロラが見られました。日本では北日本から関西地方までの広い範囲で赤いオーロラが見られました。図は「星解」という古文書(松阪市郷土資料室所蔵)にのっている赤いオーロラの図です。同書に書かれた説明を現代文に直すと、以下のようになります。「7月28日の夜、北方に山を隔てて空が一面に 赤くなった。まさに大火事だと思った。 私は、これは、おそらく若狭国一国(現在の 敦賀市を除く福井県全域)の大火であろうと 思い空を見た。」

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授業のまとめ
磁場が守る地球の環境 -宇宙放射線をさえぎるバリア-

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日本の明石市から北極点までのGoogle Earthを使ったバーチャル航海で、航海術とともに、地球は大きな磁石であることが実感されたでしょうか?

さて、地球が誕生した46億年前から約20億年の間、地球には磁場がなく、地表には宇宙放射線(太陽や天の川銀河からやってくる、高いエネルギーの陽子や電子など)がたくさん降り注いでいました。今から27億年前、初めて地球に磁場が生まれました。以後、時々、磁場の向きを反転させながら、地球はずっと磁場を持ち続けています。

図で見るように、宇宙放射線は磁力線を横切る運動をしにくいため、地球磁場は、宇宙放射線をさえぎるバリアになっています。宇宙放射線は生物の遺伝情報を伝えるDNAを傷つける危険な作用がありますので、それをさえぎる地球磁場は、地球上の生命を守る重要な役割を果たしていると言えます。

いろいろな場所での宇宙放射線被ばく量

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最近、人類の活動範囲が宇宙へと広がり、宇宙ステーションや月面基地で人が活動する時代を迎えようとしています。そこで、大きな問題になるのが宇宙放射線の被ばくによる健康問題です。

図は宇宙ステーションから地表(地球の表面)に至るいろいろな場所での宇宙放射線被ばく量を示します。宇宙から地表に近づくにつれ、急激に被ばく量が減りますが、これは地表に近づくと大気が急激に濃くなり、宇宙放射線がさえぎられるためです。一方、地球磁場も宇宙放射線をさえぎる効果があります。

大気が濃い地表では大気の効果が大きく、磁場効果は大気効果の15%程度ですが、高度が上がり大気が薄くなると、磁場効果が中心になります。  

改めて、これらの図を眺めると、地表に生きる生物は、大気や地球磁場のバリアで安全に守られ、進化してきたことがわかります。

減少しつつある地球磁場

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われわれ地球上の生物の安全を守ってくれる地球磁場は、図で見るように、その強さが減少しつつあります。過去185年間で10%も減少していますこのペースで減少が続くと1000年後、地球磁場は半減しかねません

特に宇宙ステーションの高度では宇宙放射線による被ばく量が大きくなり、健康への懸念が出てくる可能性があります。人類が安全に生きてゆく上で重要な地球磁場の今後に、関心を持ってゆきましょう!

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オーロラの動画
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