科学

シリーズ「極地を科学教育とキャリア教育に生かす」第4回

第60次南極地域観測隊の南極授業 高橋和代(東京都調布市立第七中学校 教諭) この度わたしが第60次南極地域観測隊に同行させていただき、昭和基地から中継授業をしたのは、勤務校である東京都調布市立第七中学校と、神奈川県逗子市にある科学館「理科ハウス」でした。教員人生において二度とない貴重な経験をさせていただきましたことを、みなさまに心より感謝申し上げます。教員派遣プログラムの大きなミッションのひとつ

シリーズ「極地を科学教育とキャリア教育に生かす」第3回

南極観測と中等教育の橋渡しを目指して 木村 嘉尚(東京都立世田谷総合高等学校 教諭、第51次南極地域観測隊 越冬隊員) 「わぁ、すごい!」、「あはは〜、かわいい〜」。オーロラやペンギン、アザラシなどの動画が映ると、会場には歓声があがり、一気に盛り上がる。無邪気な子供達の笑顔、未知の世界の映像に釘付けになる姿を見る度に、『南極の話をやってよかったな』と思う。 中学校ではキャリア教育として 私は現在、

シリーズ「極地を科学教育とキャリア教育に生かす」第2回

南極の話をさせていただき、ありがとうございます! 濱中 真喜(宮城教育大学附属中学校 看護教諭、第58次南極地域観測隊 同行者・教員派遣) 南極地域観測隊に同行させていただき、帰国後は小中学生や広く一般の方々に、南極での体験をお伝えするのが、教員同行者の任務です。帰国してみれば、南極とはかけ離れた日常業務が押し寄せてくる現実に飲み込まれてはいるものの、さりげなく南極の風を入れ込みながら、細々と発信

シリーズ「極地を科学教育とキャリア教育に生かす」第1回

南極教員派遣のすゝめ 生田 依子(奈良県立青翔中学校・高等学校 教諭、第58次南極地域観測隊 同行者・教員派遣) 「国立大学の農学部に合格しました。大学院生になったら、南極の長池でコケ坊主の光合成速度の研究をします!」「国立大学の工学部に合格しました。南極での微生物燃料電池の研究を続けたいです!」 今年度、私と一緒に研究をがんばって来た生徒が報告に来てくれました。研究を担当した24人のうち3人が国

シリーズ「最新学術論文紹介」第3回

白瀬氷河下流の氷山を活用したGPSブイによる氷河流動と海洋潮汐の観測 国立極地研究所助教 青山雄一 東南極リュツォ・ホルム湾の最南部に流れ込む白瀬氷河 (図1a) は、 南極氷床で最も速く流動する氷流のひとつである。氷流は氷床の氷質量を海洋へ輸送し、全球的な海面上昇に作用する。そこで我々は、地球環境変動監視の一環として、GPSを活用した白瀬氷河流動の直接観測を実施してきた。今回、これらの観測結

シリーズ「南極・北極研究を支える企業探訪」第2回

NECネッツエスアイ株式会社 20世紀後半から衛星観測技術が急速に発展し、各国は地球周辺の宇宙空間の直接観測や宇宙から陸域、海洋、大気を観測するための地球観測衛星を多数打ち上げました。そこでこれらの衛星から得られる大量データを受信する施設が南極地域でも必要になり、世界に先駆けて昭和基地に「多目的衛星データ受信システム」を建設するための予算として、1987年から3ヵ年計画で13億円が認められました。

シリーズ「南極・北極研究を支える企業探訪」第1回

ミサワホーム株式会社 代表取締役専務執行役員 平田俊次氏 日本の南極地域観測事業は1957年1月の昭和基地開設で始まりましたが、多くの企業が、厳しい南極の自然に耐える建物、設備、機械、装備品、食料品等の開発に果敢に挑戦し、世界に誇る性能をもつ製品を短期間に作り出しました。建築では、プレハブ建築技術の発展に南極が大きな貢献をしました。最初に建設された建物は、気温マイナス50度、風速60メートルに耐え

シリーズ「最新学術論文紹介」第2回

無人航空機による航空磁気測量 国立極地研究所名誉教授 渋谷 和雄 1. はじめに 無人飛行機は軍用(weapon delivery)から発達した技術であるが、空中写真撮影用途で民間での利用が拡大した。静止物体をアトランダム(無作為)でも多方面から部分的に重なるように撮影していれば、対象物のデジタル地形モデルが作れるので地理情報システム(GIS)への応用という面では小型模型飛行機レベルで良いのが魅力

シリーズ「最新学術論文紹介」第1回

コンピュータシミュレーションでオーロラ爆発の謎に迫る 国立極地研究所准教授 片岡 龍峰 右を見ても左を見ても乱舞しているオーロラを目の当たりにして立ち尽くしていると、その美しさと複雑さに圧倒されてしまう。オーロラの徹底的な謎解きというのは、まだ人間にとって難しすぎる問題なのではないか、と安直に考えてしまいそうになるのは私だけではないはずだ。実際、およそ半世紀にわたる国際協力によって、宇宙からの「そ