論文

太陽放射線被ばく警報システムWASAVIESとICAO宇宙天気センター

久保勇樹(国立研究開発法人情報通信研究機構 電磁波研究所 宇宙環境研究室 研究マネージャー) 宇宙天気、耳慣れない言葉かもしれませんが、今、宇宙天気情報の需要が急速に高まりつつあります。 はじめに 国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)は、日本で唯一の宇宙天気予報を業務として行っている公的機関です。NICTでは、その前身である郵政省電波研究所が発足した1950年代初めごろから、短波通信障害を

日本地球惑星科学連合フェローを受賞して

(公財)日本極地研究振興会常務理事 福西 浩  本年5月に幕張メッセ開催された日本地球惑星科学連合(JpGU)2018年大会で日本地球惑星科学連合フェローの受賞者に選ばれました。これまでの研究をともにした方々に心から謝意を表し、これまでの研究生活を振り返ってみたいと思います。 私は東京大学の永田研究室に所属していた博士課程2年の時に第11次南極観測隊に参加しましたが、これが私の研究生活のスタートと

インドネシアのスラウェシ島での皆既日食

元高度情報科学技術研究機構常務理事 狐崎晶雄 2016年3月9日に起こった皆既日食を見てきた。皆既日食は全世界でみるとほとんど毎年1回は世界のどこかで見ることが出来る。天は地球のどこが都市でどこが田舎なのかということを知らないので、多くの場合、皆既日食を見に行くということは辺鄙な僻地(へきち)を訪ねることを意味する。この点で極地研究者の仕事と共通点があると言えるのでないだろうか。筆者は定年退職後の

シリーズ「最新学術論文紹介」第3回

白瀬氷河下流の氷山を活用したGPSブイによる氷河流動と海洋潮汐の観測 国立極地研究所助教 青山雄一 東南極リュツォ・ホルム湾の最南部に流れ込む白瀬氷河 (図1a) は、 南極氷床で最も速く流動する氷流のひとつである。氷流は氷床の氷質量を海洋へ輸送し、全球的な海面上昇に作用する。そこで我々は、地球環境変動監視の一環として、GPSを活用した白瀬氷河流動の直接観測を実施してきた。今回、これらの観測結

シリーズ「最新学術論文紹介」第2回

無人航空機による航空磁気測量 国立極地研究所名誉教授 渋谷 和雄 1. はじめに 無人飛行機は軍用(weapon delivery)から発達した技術であるが、空中写真撮影用途で民間での利用が拡大した。静止物体をアトランダム(無作為)でも多方面から部分的に重なるように撮影していれば、対象物のデジタル地形モデルが作れるので地理情報システム(GIS)への応用という面では小型模型飛行機レベルで良いのが魅力

シリーズ「最新学術論文紹介」第1回

コンピュータシミュレーションでオーロラ爆発の謎に迫る 国立極地研究所准教授 片岡 龍峰 右を見ても左を見ても乱舞しているオーロラを目の当たりにして立ち尽くしていると、その美しさと複雑さに圧倒されてしまう。オーロラの徹底的な謎解きというのは、まだ人間にとって難しすぎる問題なのではないか、と安直に考えてしまいそうになるのは私だけではないはずだ。実際、およそ半世紀にわたる国際協力によって、宇宙からの「そ