博多港でのしらせ一般公開紹介

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福岡大学理学部教授 林 政彦

博多港に入港した南極観測船・砕氷艦しらせ

しらせが8年ぶりに博多港(9月22~24日)にやってきました。一般公開は定員7000名の予約制となっていました。見学当選者には、あらかじめ名札が送付され、見学時間も指定されていました。その原因は、博多ふ頭の「国際」ターミナルに着岸したことです。近年、中国や韓国からの環境客が増えて、国際ターミナル周辺の出入国管理が厳格になっていたのです。今回も、しらせが博多港についた週末には、しらせよりも大きな大型客船が到着。S駐車場は、何10台もの大型バスで占められていました。私たちも岸壁にたどり着くまでに身分証明書を提示したり、ひと苦労でした。 さて、一般公開は、9/22午前9時~17時、9/23午後12時~17時。いつものように、ヘリ甲板・格納庫には南極の氷、石(岩)、雪上車・4輪バギー、魚などのホルマリン漬け、スタンプコーナー、ペンギンのぬいぐるみとの機縁写真コーナーなど、南極の自然と自衛隊の観測隊支援行動がわかるような展示でした。艦内は、艦橋をはじめとして隊員室、理容室、医務室などが公開されていました。写真パネルも要所要所に置かれ、全体として「しらせ」がどんな船なのか、どのような行動をしているのか、観測隊員、自衛隊員の艦内生活がわかるような展示となっていました。

しらせ艦橋

見学者は艦長席に座ることができる。

日本極地研究振興会としては、ヘリ格納庫とヘリ甲板の境界に、しらせの記念品販売コーナーと向かい合って長テーブル2台で販売コーナーを構えました。商品は、南極クリアファイル4枚セット(1000円)、クリアファイル南極地図、北極地図(それぞれ400円)、南極大陸地図(2000円)、極地106号(オーロラ特集、1000円)、雪上車ペーパークラフト(100円)、南極動物シリーズガチャ玉(1回400円)、第60次南極地域観測隊南極カレンダー(1200円)を販売しました。福岡大学の学生6人に半日2人ずつ手伝ってもらって慌ただしく2日間を過ごしました。

日本極地研究振興会の販売コーナー

販売しながら会話を聞いてみると・・・。(見:見学者)(販:販売員)典型的な反応


(クリアファイルのペンギンを見て)
(見)「かわいいー」
(販)「裏もありますよ。4枚セットでお得です。」
(クリアファイル販売数 198部)

北極と南極の対比をクリアにとらえていて面白かったのは、北極クリアファイルを買おうとしている娘さんに、


(母)「これ北極らしいよ。南極の方がいいんじゃない」
(娘)「デザインがいいんだもん」
(販)「うん、北極の方がきれいだよね。」 (見)「(北極地図を指さして)これください」
(販)「こちら北極地図ですけど、お間違いないですか?」
(見)「えっ?北極?南極は?」
(販)「こちらです」
(見)「こっち、こっちください」
(販売数 北極地図49部、南極地図140部)
北極地図ファイルも結構売れるもんだな。

南極大陸地図を見ながら


(見)「(見本の南極地図を見ながら)昭和基地ってどこにあるんですか」
(販)「ここですよ」
(見)「えっ、端っこなんですね」
(販)「そうなんですよ、実は、島の上にあって、夏は工事現場みたいなんです。」
(見)「昭和基地から一番近いのは南アメリカでしたっけ?」 
(販)「実は、アフリカなんです。」
(見)「えー。そうすると、このあたりが南アメリカで、アフリカで、、、あれ?」
(販)「南半球ですから、位置関係は・・・・、この先がアフリカで・・・・。」
(見)「日本の基地っていくつでしたっけ」
(販)「4つですけど、今稼働しているのは、2つですね。ここはドームふじ基地で、標高が3800mくらいで、夏でも氷点下20℃以下ですよ。・・・」
(見)「イモトが登った南極で一番高い山、なんて言いましたっけ?どこですか?」
(販:テレビの宣伝力はやはり大きいなと思いつつ)「テレビあまり見ないもんで、このあたりだったかな。なんて名前でしたっけ?」
(見)「・・・・」
(見、販)「あ、これかな、ビンソンマシフ?・・・。」
(見)「貼るところないもんなー」
(見)「ちょっと高いよな」
(販)「私もそう思う・・・・。」
話題の種になりますが販売数は44部。クリアファイルの南極地図の方がよく売れました。

極地106号「特集:オーロラの謎と魅力」


(見)「論文集かな?」
(販)「一般の方向けですよ。わかりやすいと思いますよ。江戸時代の記録なんかもあっておもしろいですよ」
(見)「見ていいですか」
(販)「どうぞ、どうぞ」
1日目には、21部も売れました。でも2日目は5部だけ。普通は、ほとんど売れないそうで、1日目が異常だったのでしょうか。

南極カレンダーをみて


(見)「あれ、来年のカレンダーだ」
(販)「これ、観測隊員が撮った写真、つまり観測隊員が見た絵ですよ。他では手に入りません」
(見)「ところで、食べ物って補給できるんですか」
(販)「観測隊のことは、この先生に聞いてください。元南極観測隊員ですから」
(林)「1年間補給できないんですよ。一番困るのは生野菜ですね。肉や刺身なんかは冷凍で保存できますから・・・」
南極カレンダーは97部売れました。

そして人気は、動物シリーズの手づかみガチャ玉


ペンギンの人気が高いのは確かですが、意外と「シャチ」の人気も高かったです。トウゾクカモメは、なじみがないので、「ペンギンの赤ちゃんの天敵」という説明をつけてたりしました。大人も子供も楽しんでいましたが、お目当てのものが出てこないと悲しい思いも。小さい子供については、工夫もしてみましたが、ギャンブル性がないものがあってもいいかなとも思いました。 450個用意しましたが、早めに完売になってしまいました。600個ぐらいはあってもよさそうな感じでした。

番外の話題


(見)「タロ・ジロ」っていましたよね。今は、犬は連れて行かないの?」
(見)「日本の観測船閉じ込められて助けてもらいましたよね。」
(販)「今は、最大級の船ですから、逆に助ける方になっていますよ」
記念品を販売する中で、南極のこと、観測隊のことを知ってもらえる機会にもなったかなと思いました。同時に、あまり役には立たない、金もうけにはならない「南極観測」にこれだけの方々が興味を持って集まって来てくれるということに、少し勇気づけられたような気がしました。昨今、「社会に役に立つ」研究が求められますが、長い目で見た「社会の役に立つ研究活動」であることにもっと自信をもつとともに、その点の広報も大切なことだと感じました。そのことが、目先の成果や利益に振り回されない判断ができる社会をつくっていくことにつながるのかなと思いながら、「現実的な」お金の勘定をしつつ2日間の幕を閉じました。

林 政彦(はやし まさひこ)プロフィール

1987年名古屋大学工学部航空学科卒。1990年名古屋大学空電研究所助手、1998年福岡大学理学部助教授、2003年同教授。南極地域観測隊に3回参加。第32次越冬隊では昭和基地で、第38次越冬隊ではドームふじ基地で、第58次夏隊では南極大陸S17地点で大気エアロゾル(微粒子)を観測した。

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