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SDGs/ESDとは
SDGs(持続可能な開発目標)(図1)とは、「Sustainable Development Goals」の略称で、2015年の国連サミットで国連加盟193か国の全会一致で採択された国際目標です。17の目標と169のターゲットからなり、「誰一人取り残さない」をスローガンに、2016年から2030年までの15年間に経済、社会、環境のバランスがとれた持続可能な世界の実現を目指します。
日本でも様々な分野でSDGs達成への取り組みが進んでいます。教育の分野では、2020年度から実施が始まった新学習指導要領の前文と総則に、「持続可能な社会の創り手になる」が明記され、SDGsの担い手育成がこれからの初等中等教育の重要な柱になりました。
ESD(持続可能な開発のための教育)とは、「Education for Sustainable Development」の略称で、「SDGsの担い手を育成する教育」のことです。
図1:SDGsの17の目標
南極・北極地域はSDGsの担い手育成のための最適な教材
1959年に発効した南極条約は、南極地域の平和的利用、科学的調査の自由と国際協力の促進、領土権主張の凍結を定め、SDGsの理念であるグローバル・コモンズ(国際公共財)管理の先駆けとなりました。また最大4100mの厚さをもつ南極大陸氷床は、そこに閉じ込められた空気から過去100万年の気候変動を知ることができる貴重なタイムカプセルで、氷の試料から過去の気候変動の解明が進んでいます。さらに、人間活動の影響が最も少ない南極大陸は、南極オゾンホールの出現に代表されるように、人間活動による地球環境変動を先行して知ることができる敏感なセンサーの役割も担っています。
日本は、南極条約の12の原署名国の一つとして、1956年の第1次南極地域観測隊から今日まで、毎年南極に観測隊を派遣し、オーロラ、気象、雪氷、生物・生態系、地学、隕石、寒地工学等の分野でフロンティアへの挑戦を続けています。昭和基地やドームふじ基地など日本の4か所の南極観測基地の建設では、先進的な省エネルギー・低環境負荷技術を開発し、南極地域の環境保全に大きな貢献をしてきました。
一方、北極地域では、夏季の北極海の海氷面積がここ30年で半減し、温暖化が加速度的に進行しています。その結果、海からの水蒸気供給量が増え、北極海を取り巻く偏西風の蛇行が強まり、日本でも異常気象が頻繁に起こるようになってきました。そこで、北極地域に国土をもつ8か国が中心となって創られた北極評議会の下に各国が協力し、北極地域の総合的な観測が始まっています。北極評議会にオブザーバーとして参加する日本は、2020年度から北極域研究加速プロジェクト「ArCS Ⅱ」を実施中で、新たに北極域研究船の建造も進めています。
このように、南極・北極の両極域で国際協力の下に実施されている日本の様々な活動は、SDGsの達成に必要な地球環境・生態系の未解明の課題の解明に大きな貢献をしています。さらに、SDGsの担い手には未解明の課題を発見し、発見した課題に果敢に挑戦する行動力が最も大事な能力と考えられますが、極地の厳しい自然環境下での活動経験は、困難な課題に挑戦する勇気が、未知なるものへの好奇心とチームワークから生まれることを教えてくれます。南極・北極地域は、SDGsの担い手を育てるための最適な教材です。
日本極地研究振興会のSDGs/ESD事業
SDGsの担い手を育成するために、文部科学省は2019年度からユネスコ活動費補助金事業として、「SDGs 達成の担い手育成(ESD)推進事業」を始めました。当財団がこのSDGs/ESD 推進事業に申請しました「南極・北極から地球の未来を考えるSDG/ESD事業」が 2019年度から3年連続で採択されました。
そこで当財団が事業主体となり、極域研究の中核機関である国立極地研究所、極域研究で実績のある大学・研究機関、南極・北極授業を実施した小・中・高校、ESD活動で実績がある大学および小・中・高校、南極地域観測隊員派遣企業、SDGs支援企業、ESD活動支援センター、教育委員会、ユネスコスクールからなるコンソーシアムを構築し、事業を推進しています(図2)。事業を担う南極・北極SDGs推進ワーキンググループは、極地研究者、教員南極派遣プログラムに参加した小・中・高校の教員、ESD実践校の教員、ユネスコスクールの教員で構成されています。
開発しましたSDGs/ESD教材をユネスコスクールや全国の小中学校に提供するとともに、これらの教材を用いた授業(対面、オンライン)を支援するために、南極・北極経験者を外部講師として派遣する取り組みも進めています。
図2:ESD事業を推進するコンソーシアム体制
日本極地研究振興会が開発したSDGs/ESD教材
南極・北極地域での最近の研究・教育活動の成果をもとに、冊子とデジタル教材を開発しました。冊子は、SDGs/ESD副読本「南極・北極から地球の未来を考える」(小学生用と中学生用の2種類)と、それらを用いた授業を実施するための学習プログラム(小学生用 と中学生用の2種類)です。理科・社会・総合的な学習の時間(探究的学習)など、さまざまな教科で使用できます。
デジタル教材は、以下の7教材を開発しました。
- 「しらせ航路」と南極観測~4か月にわたる冒険の様子をのぞいてみよう
- 「みらい航路」と北極観測~ダイナミックに変わる海や空の様子をみてみよう
- 北極点への挑戦~一人で挑んだ48日間
- 「南極点初到達のあらそい」~いちばん早く到達するのはだれ!?
- Go To南極海!ようこそ~ゆったりのんびり「海鷹丸で行く南極海クルーズへ」
- 方位磁石をもって旅に出よう(基礎編)~大航海時代の航海術を学ぼう!
- 方位磁石をもって旅に出よう(応用編)~磁極の移動、地球磁場とオーロラ