コウテイペンギンのヒナが1万羽近く死んだ?

column_04

2023.8.28

南極で起きた異常事態いじょうじたい

2023年8月下旬(げじゅん)、イギリスの研究者(けんきゅうしゃ)たちが「南極の(かい)(ひょう)がとけ、1万羽ちかくのコウテイペンギンのひなが()んだ可能性(かのうせい)がある」という(おどろ)きの報告(ほうこく)をし、話題(わだい)となりました。

南極のベリングスハウゼン海に存在(そんざい)する、コウテイペンギンの5つのコロニーのうち4つで、2022年の南極の春に巣立(すだ)ちできたヒナが1羽もいなかったことが報告されたのです。

🔍調べてみよう
ベリングスハウゼン海の位置を地図で確認してみよう!
>>日本極地研究振興会では南極や北極の地図を作成・販売しています 🗺

ベリングスハウゼン海はどこ?
※画像はクリックすると拡大します

コロニーとは?

コロニーとは「集団(しゅうだん)繁殖地(はんしょくち)」のこと。

コウテイペンギンは、産卵(さんらん)子育(こそだ)て、羽の生え変わりである換羽(かんう)を行うため安定(あんてい)した海氷が必要(ひつよう)なのです。

コウテイペンギンだけではなく、ほとんどのペンギンがコロニーをつくります。「ルッカリー」と()ばれることもあります。

コロニーの様子(写真はオウサマペンギンです。コウテイペンギンとどこが違うでしょうか?)

なぜこんなことが起きたのでしょう?

これは、南極の海氷が減少(げんしょう)したことが原因とされています。
温暖化(おんだんか)影響(えいきょう)で、南極の海氷がとけてヒナが(おぼ)れたか(とう)()してしまったことが考えられます。

成鳥(せいちょう)となったペンギンの羽は水をはじくが、ヒナはふわふわした産毛(うぶげ)だけで水をはじかず、換羽するまで海に入ることはできません。つまり防水(ぼうすい)機能(きのう)がないのです。()

以前(いぜん)より、南極の海氷は温暖化の影響でどんどん減少していることが問題もんだいとなっていましたが、その影響が直接ちょくせつでた結果けっかとなりました。

🔍まめちしき
コウテイペンギンに限らず、ペンギンのヒナたちはふわふわの産毛をしています! 🐧左から、ジェンツーペンギン、アデリーペンギン、ヒゲペンギンさんです

温暖化の影響は、海氷の減少だけではない!

温暖化が進むと、()るはずだった雪が雨に変化してしまうこともあります。雨は、ふわふわの羽毛を直接ぬらしてしまうので、体温を(うば)い、凍えて死んでしまいます…

別の研究では、今世紀(こんせいき)までに90%を()えるコウテイペンギンの繁殖地が(うしな)われると予測(よそく)されており、絶滅(ぜつめつ)危機(きき)にさらされています。

私たち人間にできること、しなくてはいけないことは何でしょうか?

\南極北極SDGs探究学習コンテスト2023開催中/

みなさんは南極・北極についてどんなことを知っていますか?
南極・北極は、温暖化が他の地域より急速に進んでいて、地球の未来を考えるための大切な場所になっています。

温暖化は人間の活動が主な原因とされています。私たちの生活が、遠く離れた場所に住むペンギンたちの命を奪うことにもつながっている可能性があるのです。

お友達や家族と一緒に、SDGsを実現するために何ができるのか考えてみませんか?

➡ 南極・北極SDGs探究学習コンテストの詳細はこちら

渡邉研太郎
渡邉研太郎

1 9 7 9年に国立極地研究所生理生態学部門の助手に採用され、海洋生物を研究。第2 2次夏隊を皮切りに南極観測隊に7回参加し、第4 1、4 6次隊では越冬隊長、第5 4次隊では観測隊長を務めた。
国立極地研究所 名誉教授、農学博士、日本極地研究振興会常務理事