日本から遠く離れた南極や北極。その2つを合わせて「極地」と呼んでいます。
この極地を観測したり研究したりすることは、なぜ大切なのでしょうか?
過去と現在と未来を考える極地研究
地球上で最も原生的な自然が残されている極地。南極大陸にはじめて人類がたどり着いたのは今から約200年前の1820年。そこは、厳しい環境のために解明されていない謎が多く残る未知の領域であり、だからこそ「宝の山」とも呼べる場所でもあります。
人の手が加わっていない南極は、大昔の地球環境がそのまま冷凍保存されている“地球のタイムカプセル”とも呼ばれており、大昔の大陸の様子や気候変動、生物の進化、太陽系の成り立ちなどを解き明かす研究が行われています。
また文明圏から遠く離れた、人による環境影響がもっとも少ない地域であるため、他の地域に比べていち早く環境変動の兆候が現れます。特に北極は海氷が広大な面積を占めているためその影響が顕著で、50年前と比べて北半球の他の地域が約1℃上昇したのに対して、北極では3℃も上昇しています。
極地での研究は、地球が抱えるさまざまな環境問題を考えるための基礎となる情報を正確に集めることができるのです。
極地(南極・北極)の研究でわかること
南極大陸は、長年降りつもった雪が積み重なってできた氷のかたまりで、大昔の大気や雪がそのまま冷凍保存されている、いわば“地球のタイムカプセル”です。
つまり、この中には大昔の大気中の二酸化炭素や塵や火山灰などがそのまま保存されているのです。その深部を採集して分析することで、100万年以上前までの気温や大気成分の変化を知ることができます。
例えば、当時の空気が閉じ込められている氷を調べることで「昔は今より二酸化炭素が少なかった」ということがわかります。他の研究結果と組み合わせて「地球温暖化の原因は二酸化炭素の増加にあるのではないか」という原因の研究につながります。
過去の地球で起きていた自然現象の因果関係を解き明かすことにより、未来の地球環境がどうなるか、人の暮らしに何か役立つことはあるか、といった予測や対策を立てることができるようになります。
宇宙へ開かれた観測の窓
南極大陸の氷床上では多数の隕石が発見されています。宇宙から落ちてきて以来、氷に閉じこめられているため風化が進みづらく汚染されていないことが特徴です。
氷床の下にある岩盤や5〜6億年前のゴンドワナ大陸形成期にできた岩石、南極隕石を調査・研究することで、地殻変動や地球の成り立ち、太陽系の成り立ちを知ることができます。
また、南極・北極で見られるオーロラの研究や、大気がきれいで晴天の日が多い南極内陸の高地での天文観測なども始められようとしています。このように極地での観測は地球の未来を考えるだけではなく、宇宙の研究にもつながっています。