謹んで新春のお慶びを申し上げます。
昨年は、新型コロナウイルス感染症のパンデミックにより私たちの日常生活は大きな制約を受け、様々な困難に直面する年になりました。
今年こそ、人類がこのパンデミックを乗り越え、新たな一歩を踏み出す年になることを期待しています。
2015年の国連サミットで193か国の共通目標として採択されたSDGs(持続可能な開発目標)は、2016年から2030年までの15年間で、人類全体が生存していくために必要とする大気、大地、海洋、生態系などのグローバル・コモンズ(国際公共財)を正しく管理し、持続可能なよりよい世界の建設を目指しています。
1961年に発効した南極条約は、南極大陸の平和的利用、領土権の凍結、国際協力による科学調査を定めており、グローバル・コモンズの管理やSDGsの先駆けとして人類に貢献してきました。
近年、氷の世界である南極・北極域は、地球の未来にとって新たな意味を持ってきました。ここでは氷床や海氷の融解によって温暖化が他の地域よりも2~3倍の速度で進行しており、激変する地球環境の未来の姿を先取りしているからです。
新型コロナウイルス感染症は、持続可能な社会を建設することがいかに困難な仕事であるかを教えてくれましたが、これからも世界は予期せぬ危機に頻繁に見舞われるでしょう。この危機を乗り越えるには、予期せぬ課題に果敢に挑戦し、解決していく、行動力のある人材の育成が強く求められます。極地の厳しい自然環境下で未知の世界に挑戦する南極観測隊員やさまざまな分野の極地専門家の行動力こそSDGsの担い手が最も必要とする能力です。
そこで当財団は一昨年度から、南極・北極域での研究活動から得られた最新の情報を用い、小・中・高校生のための各種のSDGs教材を開発し、極地の専門家が外部講師となってそれらの教材を用いた授業を実施し、SDGsの担い手を育成する事業を始めました。
コロナ禍のために当財団も様々な制約を受けていますが、大きな可能性を秘めた南極・北極での研究・教育活動を支援し、その成果を社会に普及する当財団の活動のために本年も皆様の一層のご鞭撻、ご支援をお願い申し上げます。
2021年1月1日
公益財団法人日本極地研究振興会
代表理事 福西 浩