南極はもともと人が住んでいない、手つかずの大自然がいちばん残されている大陸です。
生物や自然現象など様々な研究のための観測や調査、
オキアミや魚をとる漁業、ペンギンや氷河などをみる観光が盛んになってきています。
そのため、より多くの人が南極に訪れるようになりました。
南極の環境は、どのように守られているのでしょうか。一緒に考えてみましょう!
南極では古くはアザラシ漁や捕鯨、やがて南極探検が行われ、次第に注目を浴びる場所になっていきました。
より多くの国が南極に目を向けるきっかけとなったのは、1957年から行われた国際的な共同観測計画「国際地球観測年」でした。
日本を含む12の国が、それぞれの南極の基地で協力して地球の様々な性質について観測を行いました。
その後、12の国が責任をもって南極を管理するため、1959年に「南極条約」を定めました。
これにより、
(1)南極では平和的な活動以外してはならないこと
(2)科学的な調査は自由に行え、国際協力に努めること
(3)南極はどこの国の領土でもないこと
を決め、定期的に会議を開いて問題を解決してきました。
一方、南極のオキアミや魚などの海洋生物資源は、南極条約から派生した「南極の海洋生物資源の保存に関する条約」により保護し、合理的に利用できるとされています。
1991年には「環境保護に関する南極条約議定書」を定め、南極の環境や生態系を守る約束をしました。くわしく見てみましょう!
①環境影響評価
南極での人間活動の影響がなるべく小さくなるよう努力するよう定めています。
日本の南極観測隊でも、毎年観測や建物を建てる計画を環境省に提出し、審査で承認を受けたうえ実施しています。
ペンギンに小さな記録計を取り付ける調査も、南極に観光でいく人たちも、届け出をだし許可を受けることが義務付けられています。
➁動植物の保護
南極や周りの海には、そこにしかいない生物種(ペンギン、あざらし、コケ類など)が生活しています。
これらを保護するため、研究で生物を採取する場合も(コケを少し採取するときでも)許可をとる必要があります。
(日本の場合は環境省に申請します)
また、もともといなかった生物や病原菌が入ってくると、その土地固有の生物を追い出したり、
病気で死滅させたりするため、南極では外来の生物や土の持ち込みができません。
南極に上陸するときは、靴底の土をしっかり洗い流します。
③廃棄物の取りあつかい
人間が生活をすると必ず出るのがゴミや汚水などです。ゴミは南極に残さず、なるべく持ち帰ります。
南極観測隊では、ゴミを分別し、燃やして出た灰も日本に持ち帰ります。
また使って汚した水などは浄化槽できれいにして海に流し、海洋生態系にはなるべく影響を与えない工夫をします。
④保護区の指定
貴重な自然を守るため、国立公園のように一部の活動を禁止し、立ち入りを制限しています。
研究目的であっても、そこに立ち入るには国の許可が必要です。
海には、海洋保護区の仕組みがあります。そこでは、オキアミや魚を取りすぎて資源がなくならないよう、卵を産みに集まってくる親の産卵をジャマしないように禁漁区などを定めています。
南極での観測により昔の気候の変化や南極上空のオゾンホールの理解が進みました。
一方、南極にしかいない生物は、気温・水温の上昇や大気中の二酸化炭素の濃度の増加による海水の酸性化などの影響で、以前と比べて生活しにくくなっています。
将来の地球の環境研究にとっても大切な南極域は、南極条約によって平和と科学の地とされています。
これからの変化を見定めながら、国同士が協力していくことが必要です。
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