活動報告-小松俊介先生-

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事前準備

※画像はクリックすると拡大します。

南極に関する情報収集や、国立極地研究所 南極・北極科学館の見学、図書館に南極関係の書籍と絵本の展示コーナーを開設しました。南極授業で使用するカメラ機器や編集ソフトの扱い方を練習・習得、国内側接続用の機器の準備と動作確認なども行いました。(とくに、カメラ機器や編集ソフトは普段から使い慣れていないと南極では使えないので、扱える状態にしておくことが重要です!)

9月より「事前授業」を実施し、南極授業につながるように授業を展開しました。
※対象は所属校である筑波大学附属高等学校及び筑波大学附属視覚特別支援学校高等部

南極についてどんなことを知っている?マインドマップの作成

国語科の教諭による、「物語の作り方」の授業の様子

しらせ船内での取り組み

2022年11月11日に出港し、昭和基地到着は約1ヶ月後の12月22日です。その間の船内での活動について説明します!

授業の準備

授業の骨格をつくり、そこに観測隊の皆さんにどのように参加していただくかという順でシナリオを考えました。
青焼き写真を実際に感光・現像させる場面で大学院生に青焼きをお手伝いいただくことにしました。晴れた日に出演いただく予定の大学院生に集まってもらい、青焼き写真のデモンストレーションを行いました。(昭和基地についてからでは時間が取れないので、船内で共有しておいて良かったです!)

※オーストラリア(フリーマントル)に滞在の際には、 持参した海外SIMで Zoomを使って打ち合わせを行い、生徒のワークシートを PDFデータで送っていただくなどして本番の南極授業にどのような状況で臨むかすり合わせを行いました。

こんな仕事も行いました!

校内ブログの作成を行なったり、船内イベント「赤道祭」(赤道を無事通過できるように記念して行う儀式)などの準備を行いました。
派遣教員にも当直の仕事は回ってくるので、2回担当しました。
船務長にしらせ内部を案内していただき、写真を撮らせていただきました。また、観測隊員と研究内容や南極での活動についてお話を随時伺いました。

提供:国立極地研究所 撮影:JARE64 中川潤

🌀 体調管理も大切なお仕事です!
船の中での生活を続けていると、気づかずに体調が悪くなっていることがあり、私の場合は船酔いが頭痛と倦怠感(けんたいかん)の形で現れました。薬は用意していたのですが、副作用が強すぎて眠気や怠さがつきまといました。同教員派遣の野田先生が持っていた薬と相性がよかったのかよく効いたので、自分に合う薬を予め準備していくことも大切です
南緯40~60度は「吠える40度、狂う50度、絶叫する60度」という有名なフレーズがあるくらい、かつてないほど揺れます!物理的にパソコンを広げることも難しく、撮影も危険でした。
「薬をのまずに船酔いになれてしまうことが一番よい」という話も伺い、しらせの中での生活に早く順応できることにすることが重要です。

昭和基地での取り組み

野外観測チームに同行して、観測や調査に立ち会い、支援をしながら取材を行いました。(野外観測では調理を担当する機会があり、皆さんに喜んでいただけました🍴)
また、石彫の技術も様々な場面で活かすことができました。ラングホブデでは、ヘリコプターの着陸ポイントに大きな石があり、この石が邪魔で風向きによっては着陸困難なポイントになっていました。地形チームと協力し、この石を移動させることができました。また「しらせアルバム」の担当となり 、個人写真とコメントを回収する仕事も行いました。
観測や調査に立ち会って初めて気づけることも多く、キャンプ地で研究者の方々をお話できたことも貴重な経験となりました!

生徒の制作した絵本作品や青焼き写真を観測隊の皆さんに見ていただく機会を設けました!

🔍 南極の考え方・動き方
昭和基地へ向かうしらせの船内では、自分自身の頭と身体を “南極仕様” に慣らしていく期間として有効に活用できました。周りの景色の変化も含めて時間をかける必要がありました。
それに対して、昭和基地での生活・活動はあっという間でした。「チャンスは一度きり、逃したら2度はない」というお話を聞いていたので、一瞬一瞬を大切に過ごすように努めました。
同時に、あまり気構えずに流れに身を任せるように動くことでうまくいくこともありました。急に予定も変わるので 柔軟に構えておくことが大切で、南極の考え方・動き方があることを知りました。

南極授業


【授業のテーマ】「アートを通して南極とつながる」
作品制作を通して南極に興味関心を深めることをねらいとし、1年生は「南極で青写真を描く」、2年生は1・2組が「グラフィックレコーディングによる南極授業のリポート」、3〜6組は、「南極をテーマとした絵本制作」という題材で授業を行いました。南極授業は中間発表の位置づけとし、帰国後に国内で最終的な作品発表(展覧会)を実施する計画です。

生中継で南極授業を行う意味を考えながら、準備をしてきました!

青写真とは?

青色の地に、文字や線が白抜きで複写される技法、及びそれによって得られた印刷物のこと。光の明暗が図の濃淡に対応する。

グラフィックレコーディングとは?

イラスト+言葉でまとめる手法

▲講師作品
なぜ絵本?

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海底生物の採取

2~3mの厚い氷の下にいる微生物を
どうやって採取する?

ドレッジによる採取方法を開発

生徒の作品紹介(一部抜粋)

それぞれの研究にアイデアと想像・創造力において「面白い!」と思える発見がありました。

教員南極派遣プログラムを終えて

第1次から第64次まで連綿と受け継がれてきた「南極地域観測隊」の活動と、 これまでの積み重ねによる伝統や文化 に触れることができたことは私にとって貴重な経験となりました。改めて考えると、 一教員が国家事業に同行し、最前線での活動を支援しながら取材できる大変贅沢なプログラムだと思います。

私が担当するクラスに、小学生の時に南極に行ってみたいという夢をもっていた生徒がいました。しかし、いつしか現実路線に思考が変わ っていき南極のことを忘れていたそうです。そんな中で私が教員派遣プログラムに参加することを伝えると 「南極は小学生の時の夢だったけど、まさか担任が南極に行ってしまうなんて思っていなかった!」というやりとりがありました。 南極は、子どもたちにとってまさに「夢」の世界なのだと思います。私自身も、地球上 のどこかに南極はあるのだろうけど、自分とは関係ない場所・空間として生きてきました。本プログラムに応募するにあたって、自分ごととして南極を捉えた時に、地球上の現在・過去・未来につながるという研究者の視点や 、地球環境のメカニズムの解明など 、地球科学の奥深さ、そして南極観測の歴史、国際的な協力体制(今回でいうとロシア・ウクライナ問題が、ドロムランに影響があったことなど)、様々な側面から南極を考えることができると知りました。

私の専門とする「美術」からはどうでしょうか。南極を通して、自分自身の制作・表現においても地球規模で考え直す機会を得ました。同時にその視点は、授業へも活かせると気づきました。
観測隊メンバーとの出会いも本プログラムでは、重要な要素であると思います 。それぞれの専門もバックグラウンドも異なる隊員がしらせに乗って共同生活をします 。普段、聞けないようなお話をたくさん聞くことができました。この場限りではなくて、今後もお付き合いが継続できるように関係性を大切にしていきたいと考えております。

今回、美術を専門に制作研究と教育に関わってきた者として、南極観測隊に同行できたことを大変光栄に思います。今後も美術的なアプローチから「南極」について考えていくことの可能性と手応えを感じました。 南極授業だけは、伝えきれない貴重な経験をさせていただきましたので、帰国後に本プログラムでの経験を教育の現場に還元していきたいと思います。

小松俊介
小松俊介

筑波大学附属高等学校、美術教諭。彫刻家。(所属は派遣当時のものです)
趣味は料理、映画鑑賞、美術館・作品蒐集。
第64次南極地域観測隊に同行し、教員南極派遣プログラムに参加した。