活動報告-野田豊先生-

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事前授業

※画像はクリックすると拡大します。

同教員派遣の小松先生と相談し、観測隊紹介カードのフォーマットを作成しました。出発前の定例打合せで隊員に依頼し、隊長自ら後押しをしてくださったおかげで40名近くの隊員が協力してくれました!
校内掲示やタブレット端末にて、いつでも閲覧できるようにしたことで、出発前にも隊員の方へのメッセージや質問を考える児童生徒がたくさんいました。

南極に関する図書コーナーを司書教諭(図書室の先生)の協力のもと設置し、児童の興味関心を高められるよう工夫!読んだ本の数だけ、折り紙のペンギンを貼るようにしました。

発達段階に応じた事前授業を実施

※小学校:低・中・高学年で2回ずつ、中学校:3回、他校:1回、特別支援学級:1回

「もし自分が研究者だったら。」という問いかけで、南極での観察・実験を児童生徒に考えてもらい、授業づくりの柱にすることにしました。ただし、南極に関する情報が全くない状態では、考えをもつことが難しいと想定していたため、興味関心を高めつつも、情報を与えすぎないラインを考えながら、南極について知るついて知る時間も設定しました。

しらせ船内での取り組み

2022年11月11日に出港し、昭和基地到着は約1ヶ月後の12月22日です!
その間船内では、南極授業の台本作りや観測隊の方への出演依頼、事前打ち合わせなどを行いました。南極授業当日は児童生徒や観測隊とのやり取りを重視したいと考えていたため、活動をまとめた「南極までの道のり」の動画を作成し、3学期が始まってすぐに各校で閲覧できるように計画を立てました。
また「南極通信」を週2回ほど発行し、往路では船上の生活、復路では授業で扱えなかった昭和基地での生活や観測隊を紹介しました。(昭和基地では現地での体験や授業のまとめに専念することに!)
その他にも、海洋観測やしらせ船内での取材、メディアの取材対応、隊の運営に関わる仕事やイベントなどの仕事を引き受け隊員と一緒に取り組みました。

物資の運搬や、安全講習

海洋観測の取材

💛 船内での生活で心がけたこと
(新型コロナウィルス感染対策における)隔離期間やしらせ船内での生活は「情報収集」において大切な時間でした。隔離期間では「サイエンス講座」、船内では「しらせ大学」が開講され、各研究の概要が紹介されました。
また、船内では隊員それぞれの自己紹介コーナーが設定されたことでコミュニケーションを図るきっかけにもなり、隊員の皆さんと関わる時間が増えたことで授業に関する相談もしやすくなりました。船内でのイベントも楽しみながら、観測隊や海上自衛隊の方々と関わる時間を大切にしたいと考えて過ごしました。

昭和基地での取り組み

野外観測チームに同行したり、昭和基地内の解体作業や除雪作業、設営の支援などを行いました。その中で、観測隊の方々に話を伺ったり、写真の撮影を行ったりしました。その中で、支援の在り方は常に意識しながら行動しました。予定していた以上のオペレーションに参加することができ、貴重な体験となりました!

バンジー除雪作業

ドラム缶つぶし作業

研究や観測の取材

\野外観測ではこんなところに行きました/

明るい岬

ストランニッパ

水くぐり浦

きざはし浜

ルンドボークスヘッダ

ベストホブデ

S16

ラングホブデ

📝事前にしっかり計画しその場でしか出来ないことを優先!
ありがたいことに様々な観測や研究に同行することができました!授業のストーリーの大枠は決まっていたので、同行の際の取材や撮影の視点を明らかにして臨めたと思います。また、授業で扱えない内容は復路の「南極通信」で伝えようと計画していたので、授業の内容と区別して取材することができました。野外観測ではパソコンを持ち込まないようにしました。もちろん野外環境下でのリスクを懸念もあったのですが、何より研究者の作業を手伝いながら話を聞くことに専念しようと思ったからです!

南極授業

\小学生向け/
【授業のテーマ】「やってみようから始まる南極観測」
日常の授業づくりでは「児童自身が問題を見出す」ことを大切にしています。そこで小学生の素直な思いが観測隊の活動にどうつながるのかを考え、授業を構成しました。授業のまとめでは、挑戦を通して「新しい自分」の発見につながることを伝え、日常生活や学校での学びを大切にしてほしいという教師の願いを伝えました。

南極でかき氷を作るとしょっぱいの?

\中学生向け/
【授業のテーマ】「学びの先にある未来のしごと」
奥多摩中学生では「協働的な学習」を大切にしています。そこで、「もし自分が研究者だったら」という問いかけに対して、グループで話し合いながら研究テーマを練り上げていくことにしました。また、観測隊員に協力を仰ぎ「南極に行くきっかけ」「南極での仕事」などを記載したカードを作成し、タブレット端末上でいつでも閲覧できるようにしていました。南極授業の際には、生徒自ら活躍する隊員に直接インタビューすることで、自分ごととして疑問を解決するとともに、進路選択を考える中学生へのメッセージにもなる授業をめざしました。

研究者の道を選んだ理由、喜びや苦労したこと・・・。

\子どもたちの質問を体当たりで調査/

白夜とは?

太陽と寒さどっちが勝つ?

ペンギンの生態を知りたい!

南極の氷はふかふか?

魚を釣ってきてほしい!

南極は干物づくりに適してる?

カップ麺は本当に凍るの?

洗濯物はどうしてる?

岩石をみてみたい!

緑はあるの?

子どもたちの感想(一部抜粋)

  • 南極授業をやる前までは、南極の事をなにも知らなかったけど、この授業のおかげでいっぱい知ること ができて良かったです。
  • 南極は、夏でも朝が-1℃ だということに驚いた。ブリザードになると、10m 先も見えなくなるのは大変だと思った。
  • 理科は苦手だけど魚のことなどわかりやすく説明してくれて楽しかった。
  • 知らなかったことも知れてすごくワクワクしました。大人になったら僕も南極に行ってみたいです。
  • 南極から実際に実験をしていただいたり、観測隊のみなさんからのお話もたくさん聞くことができたりして、とても面白かったです。
  • 南極の氷が普通の氷と違うことを初めて知りました。他にも南極と日本の違いがあったら調べてみたいと思いました。
  • 南極には極寒の水に耐えられる魚がいることに驚きました。また,氷を調べるだけでも昔の様子を知ることができると知りすごいと思いました。今回のめあてである将来についても実体験からどのようにしていたのか詳しく聞けてよかったです。
  • 南極の現在の様子や、観測隊の皆さんの姿を見ることができて、少し身近に感じることができた。難しい内容のお話もあったけど、興味が湧いたことがたくさんあったから、自分でも調べてみたいと思った。
  • 地層ではなく氷ではるか昔のことを調べることができ、過去の空気が取り出せる実験が面白かったです。また、中継をつないで実際に南極でどのようなことをしているのか感じることができて面白かったです。貴重な体験をありがとうございます。

教員南極派遣プログラムを終えて

日常的に関わっている児童生徒にとって、とても良い取組だと感じています。帰国後も都内の児童生徒、教員向けに発信する方法を検討し実行していきたいと思っています。
教員にとって授業は、最も 大きな仕事だと考えています。 欲を言えば「もっと授業がきないか 」という思いもあり、都内の教員 からは「一緒に授業ができたらいいのに」という 声をたくさんもらいました 。 ZOOM等を用いたオンライン授業が日常化している今、スタジオから 各学校の教室(※会場が大きくなれば接続等で問題が起こりやすい…)であれば、教員以外のスタッフに負担をかけず、 実施できるのではないかと考えます。

教育現場では、オンライン授業の環境が整いはじめ、どの学校でも実施可能であるといえます。例えば 「所属校では、学年やクラス単位に分散して実施」「教員と関係のある学校で 複数回実施」など 、無理なく実施する方法を 検討すれば、深く広く南極事業を発信できるのではないでしょうか。より多くの児童生徒のためにこのプログラムが活用していけるようになるとよいと考えています。

念願であった南極授業は、所属校、観測隊員、広報室、南極授業スタッフ など、多くの人に支えられ、実施できました。全ての人に感謝の気持ちでいっぱいです。当日は多少の機器トラブルはありましたが、自分の中でイメージしていた授業像は具現化できたと思っているので、 今回の取組の 目的は達成できたと感じています。

野田豊
野田豊

奥多摩町立古里小学校、理科教諭。(所属は派遣当時のものです)
第64次南極地域観測隊に同行し、教員南極派遣プログラムに参加した。