メールマガジン 第7号(2016年10月11日発行)

シリーズ「南極観測隊エピソード」第6回

南極観測と朝日新聞その6 生きていたタロ、ジロ 元朝日新聞社会部記者 柴田鉄治  第2次観測隊を乗せた「宗谷」が氷に閉じ込められて動けなくなり、米国の観測船「バートンアイランド号」が救出に来てくれたが、それでも昭和基地には近づけず、結局、第2次隊は「本観測だ」としていた越冬隊を残すことができなかったことは前回記した通りである。  その教訓を生かして、第3次隊は物資の輸送方法を1,2次隊とはガラリと

シリーズ「南極観測隊の生活を支える技術」 第7回

南極基地での廃棄物と汚水の処理 国立極地研究所極地工学研究グループ 石沢 賢二 1.南極に持ち込む物資と持ち帰る物資  1957年、日本の第1次越冬隊11人が昭和基地で生活を始めてから、途中3年間の中断はあったものの、来年2017年で南極観測は60年を迎えることになります。第1次隊の越冬物資は、150トンあまりでした。現在「しらせ」が毎年運ぶ重量は、コンテナ容器などを含めて約1,100トンです。こ

南極観測60周年を振り返って~永田武先生から学んだもの

日本極地研究振興会常務理事 福西 浩   南極昭和基地から見たオーロラ  今年は南極観測60周年を祝う記念行事が各地で開催されている。1956年11月8日、南極観測船「宗谷」が永田武観測隊長率いる観測隊員53名、乗組員77名、計130名を乗せて東京港晴海埠頭を出航した。そして翌年の1957年1月29日にオングル島に昭和基地が開設され、西堀栄三郎越冬隊長率いる11名の越冬隊の未知への挑戦が始まった。

シリーズ「南極・北極研究の最前線」 第8回

地球最後の磁場逆転は従来説より1万年以上若かった 国立極地研究所助教 菅沼 悠介  過去の地磁気の変化は地層中に古地磁気記録として残される.従って,古地磁気記録を調べることで地磁気の極性が過去に何度も逆転を繰り返してきたことが明らかにされてきた.特に,最後に起こった地磁気の逆転は,「ブルン-松山境界」(Brunhes-Matuyama境界)と呼ばれる最も顕著な地質年代基準面の1つであるため,この境

シリーズ「極地からのメッセージ」 第6回

北極で地球を、宇宙を見る~北極圏ノルウェーを訪れて② 朝日新聞社会部記者 中山 由美 トナカイ(トロムソ南方のHeiaで)  どこを見ても暗い。極夜まっただ中のノルウェーの北極圏を取材したのは今年1月だった。カメラを向けても夜景ばかり。「写真は?動画はどうしよう」……不安を抱えながら、スバールバル諸島スピッツベルゲン島を訪れた。ニーオルスン国際観測村やロングイヤービン(78°09′N, 16°03

シリーズ「昭和基地だより」 第2回

10年ぶりに流れた海氷 第57次南極地域観測隊 越冬隊長 樋口 和生 南半球の春分を目前に控え、一日の半分の時間太陽が顔を見せてくれるようになった。 南極入りして約9ヶ月、越冬生活が始まって8ヶ月を迎えようとしている。太陽が昇らない極夜を越えてきた身としては、暖かさを増した日の光がことのほか嬉しく思える。我々57次越冬隊は、これまでのところ大きな事故やトラブルもなく、隊員は精力的に任務をこなし、昭