シリーズ「昭和基地だより」 第4回

極夜の季節を過ごす隊員たちの生活について

第58次南極地域観測隊 越冬隊員 医療担当 大江 洋文

 日本は今夏の真っ盛りだと思いますが昭和基地のある南半球では季節は逆の冬、しかも昭和基地は高緯度にあるため5月31日から7月12日までは、太陽が全く上ってこない極夜という期間になります。隊員たちはこの暗くて寒い時期を元気に乗り切るために、6月21日の夏至(南半球では冬至に相当)をはさんで隊員同士の士気を高め親睦を深める目的でミッドウィンター祭りというお祭りを開催することになっています。同様の行事は100年以上前のイギリスのスコット隊の時代から昭和基地だけではなく南極で越冬する各国の基地でも行われてきました。

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ミッドウィンター祭りに向けて雪像作りをする隊員たち。重機も使った大掛かりなものです。

極夜の期間は外で活動できる時間も少なく運動不足になりがちです。また1日のほとんどが夜のため、日常の生活リズムが狂ってしまい、いくら寝ても寝た気がしないとか、日中も眠くてぼんやりしてミーティングなどではつい居眠りしてしまうと隊員たちからは戸惑いの声が出ています。そうは言っても訓練や仕事を控えるわけにはいきません。隊員たちは南極の生活を楽しみながらも締めるところはきっちり締めて生活をしています。

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いくら暗くて寒くても火災は待ってくれません。極夜中でも月に1度の消防訓練は欠かさないようにしています。

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事故の際に仲間を助けられるのは自分たちしかいません。クレバス転落を想定したレスキュー訓練の一コマ

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バーかまくら、6月1日の気象記念日・電波の日を記念して気象棟近くのドリフト(雪だまり)に掘ったかまくらでバーをしました。

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管理棟内のバーです。看板Femti Åtteとはノルウェー語で58の意味です。
(注:Å=Aの上にリング、計量単位のオングストロームなどに使われる北欧系言語のアルファベットの一つ。)

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バーでは時々握りずしのイベントがあります。本吉58次総隊長仕込みの職人さん2名が自分が飲むのも後回しにして一生懸命握ってくれました。

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娯楽室でビリヤードを楽しむ隊員たち。58次隊ではビリヤードが盛んです。

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ビリヤード台は約半世紀前に第9次の先輩たちが持ち込んだもの。第9次隊は日本人初の極点旅行を成功させた隊、日本の観測隊の歴史が感じられます。

ミッドウィンター祭りを控えて、6月中旬に定期健康診断を行いました。越冬中の隊員は3か月に一度血液検査、6か月に一度心電図検査、1年に一度胸部レントゲン写真を検査することになっています。前回の3月は予定していたレントゲン検査が機器の不調のため延期になってしまったために今回はこの検査項目すべてを行わなくてはならず、とても忙しい1週間でした。

レントゲンや心電図の結果はその場で隊員に伝えられ、採血の結果については後日医療隊員から生活指導も含めて伝えられます。お祭り明けから早速ダイエットを始めた隊員も見られました。

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健康診断の採血、しばらくぶりですがうまく採血できました。

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胸部レントゲン写真を撮影しているところです。

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夜明けの忙しい活動をひかえて、トレーニングをする隊員たちも増えてきました。

大江 洋文(おおえ ひろふみ)プロフィール

第58次医療隊員。1960年、仙台市生まれ。大学まで仙台で過ごし、仙台市立病院、東北大学附属病院、岩手県立磐井病院などに勤務。専門は消化器外科、一般外科。趣味は登山、写真撮影(風景、動植物)、サイクリング、音楽鑑賞(ロック、民族音楽)。山についてはウラヤマからヒマラヤまでを信条に地元の里山から中国崑崙山脈、インドカラコルム、パキスタンカラコルムに足跡を残す。第54次観測隊参加。家族は妻と息子3人。

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