シリーズ「極地を科学教育とキャリア教育に生かす」第2回

南極の話をさせていただき、ありがとうございます!

濱中 真喜(宮城教育大学附属中学校 看護教諭、第58次南極地域観測隊 同行者・教員派遣)

南極地域観測隊に同行させていただき、帰国後は小中学生や広く一般の方々に、南極での体験をお伝えするのが、教員同行者の任務です。帰国してみれば、南極とはかけ離れた日常業務が押し寄せてくる現実に飲み込まれてはいるものの、さりげなく南極の風を入れ込みながら、細々と発信している日々であります。

これまで南極のお話しをさせていただいた場は、近隣の中学校や小学校の児童館、教員養成課程のある大学、教員の研究会、その他一般の学習会などです。話の大部分を占めるのは、共に過ごした58次隊の方達からいただいた、エピソードとメッセージです。話し手の私というフィルターを通っているので、専門的な内容は上手く伝えられてはいませんが、それでも毎回反響をいただき、興味が高まる手応えを感じます。いただいた感想は、私一人ではなく、南極観測に関わる方々に宛てられたものです。この場をお借りして一部を共有したいと思います。

~中学生からの感想~

・最初はどうやって南極まで行くんだろうと思っていました。そしたらラミングという方法で氷をくだきながら進むと聞いて、すごく大変だなと思いました

・南極は空気がとてもきれいで、寒いのに息が白くならなかったのがすごく印象的でした。

・私は特に、南極の空の色がとてもキレイな事に驚きました。知らないことばかりでとてもわくわくしながら聞くことができました。

・皆さんのように自分の好きなことはとことん頑張りたいと思います。

・私が特に興味をもったのは「ペンギン」についてです。アデリーペンギンの生態や食べ物についてカメラをつけて調べる事を知ってとても驚きました。ペンギンは威嚇したり人の手を噛んだりしないのか気になりました。バイオロギングという言葉を知りました。

・南極での生活では、環境に負荷をかけないようにと配慮されていると思いました。しかし、自然とはデリケートだと思いました。人が生活するだけでも負荷がかかっているというのが印象に残りました。

・現地にいる方の考え、意志の強さをとても感じました。

・私が一番興味を持った事は、南極でのお仕事や生活についてです。私は年中、物資が届くものだと思っていたので、お話しを聞いて本当に驚きました。いろいろな職業の方が厳しい環境の中、知恵をしぼって生活しているんだと知り、本当に感動しました。

・南極で働いている人みたいに自分の好きなことを追求して職業にするのはすごくいいなと憧れます。今から勉強も好きなことも一生懸命取り組んで、やりがいのある仕事を見つけたいと思いました。

・南極で仕事をしている方々は、それぞれの仕事に責任感を持っていて、1つの物事に対して半端にせずそれを突き詰めているということが分かりました。

・南極に行く人一人ひとりが大きな責任を背負っていて大変そうですが、美しい自然に囲まれて、新しく出会った仲間たちと共に過ごしていく日々は楽しそうだなとも思いました。

・困難な状況の中でも「誰かのために」という思いを持って仕事をする姿がかっこよかったです。また、最後の皆さんからのメッセージは心に響くものがたくさんありました。私も夢に向かって努力したいです。

~大学生からの感想~

・他職種の人が協力して自分の専門以外の事に触れて、さらに自分の考え方、視野を広げていくというのがとても素晴らしい事だと思いました。

・自分でチャンスをつかんでいろいろな経験をしてみたい。

・教員自身が夢を持ち実現させていく事は子どもの教育につながると思った。

・南極観測隊は、研究ができるだけでなく、人間としての成長もできる場所であると思った。

・南極の氷を実際に触れさせていただいて、空気のはじける音を聴いたときに不思議な感じになった。

・このまま過ごしていけば、私の人生は普通に過ぎてゆくのかなと思っていたが、何かのきっかけやチャンスを無駄にせず、何でも挑戦してみる事って大事だなと思いました。

・「悩みながらでもいいから進むことが大切」というメッセージは、今の私に言われているようで勇気をもらいました。

~社会人からの感想~

・少しでもミスれば死に直結する現場のプロの仕事、責任感、重圧(すごい!)

・昭和基地で働くプロフェッショナルな人たちについて、映像を見ながら自分の仕事や生きる姿勢について学ばせていただきました。

・隊員の方のメッセージは、子ども達にも私にも響きました。多感な中学生の時期にこういう学びの機会を得られて子どもたちは幸せだなあと思いました。

・子ども達の生きる道を広げるためには、私達教員自身の視野(生きる道)を広げる事が大切なんだと思いました。

・気力体力はどこから出ていたの?

・南極の氷!!2万年前の空気の泡、すごいなあ。不思議だなあ。有り難いなあ。・・もう、なんか感動!

・氷も写真も動画も、いろんな南極に触れて「なんてちっちゃいんだろう人間」って思った。ちっちゃい人間が、ちっちゃい頭でグルグル悩んだりしてる。そんなときに、南極の事とか見たり聞いたりしたら、心をゆったり持つことができる瞬間が訪れるんじゃないかと思う。

・基礎の学習が大切というお話、頑張らなければならない場面があるという話を、弱気になっている生徒にぜひ伝えていただきたいです。好きなことさえ頑張れなくなっている生徒、大人がたくさんいます。自分の将来について考える良い機会になると思います。

 

南極の氷に触れる

濱中 真喜(はまなか まき)プロフィール

青森県野辺地町出身、宮城学院女子大学卒業。1993年に宮城県教員採用試験に合格し、小学校1校、中学校5校で養護教諭として現在まで勤務。2002年に青年海外協力隊に現職参加し、アフリカ ザンビア共和国で学校保健やエイズ予防教育などの活動を行う。2016年度の教員南極派遣プログラムで第58次日本南極観測隊に同行。

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