第16回 メルマガ

シリーズ「南極観測隊エピソード」第15回

南極観測と朝日新聞その15 8次夏隊と9次越冬隊のこと 柴田 鉄治(元朝日新聞社会部記者) 私が同行した第7次観測隊の隊長だった村山雅美氏は、『ミスター南極観測』とも呼ばれていた人だ。日本でも有数な山男で、日本山岳会のマナスル登山隊に参加して登頂し、帰国してすぐ第1次南極観測隊に合流した人だ。 本番の第2次越冬隊長に決まっていたのだが、不運の2次隊は観測船「宗谷」が氷にとざれて昭和基地に近づけず、

シリーズ「南極観測隊の生活を支える技術」第16回

南極観測を支える海上輸送 その3 日本の南極観測船 石沢 賢二(国立極地研究所極地工学研究グループ) 1.国際地球観測年(IGY) 世界各国が国家事業として南極観測に力を入れだしたのは、国際地球観測年(International Geophysical Year)という、国際科学研究プロジェクトが契機でした。このプロジェクトは、1957年7月1日から1958年12月31日までの期間中に、オーロラ、

シリーズ「極地を科学教育とキャリア教育に生かす」第3回

南極観測と中等教育の橋渡しを目指して 木村 嘉尚(東京都立世田谷総合高等学校 教諭、第51次南極地域観測隊 越冬隊員) 「わぁ、すごい!」、「あはは〜、かわいい〜」。オーロラやペンギン、アザラシなどの動画が映ると、会場には歓声があがり、一気に盛り上がる。無邪気な子供達の笑顔、未知の世界の映像に釘付けになる姿を見る度に、『南極の話をやってよかったな』と思う。 中学校ではキャリア教育として 私は現在、

シリーズ「極地を科学教育とキャリア教育に生かす」第2回

南極の話をさせていただき、ありがとうございます! 濱中 真喜(宮城教育大学附属中学校 看護教諭、第58次南極地域観測隊 同行者・教員派遣) 南極地域観測隊に同行させていただき、帰国後は小中学生や広く一般の方々に、南極での体験をお伝えするのが、教員同行者の任務です。帰国してみれば、南極とはかけ離れた日常業務が押し寄せてくる現実に飲み込まれてはいるものの、さりげなく南極の風を入れ込みながら、細々と発信

シリーズ「極地を科学教育とキャリア教育に生かす」第1回

南極教員派遣のすゝめ 生田 依子(奈良県立青翔中学校・高等学校 教諭、第58次南極地域観測隊 同行者・教員派遣) 「国立大学の農学部に合格しました。大学院生になったら、南極の長池でコケ坊主の光合成速度の研究をします!」「国立大学の工学部に合格しました。南極での微生物燃料電池の研究を続けたいです!」 今年度、私と一緒に研究をがんばって来た生徒が報告に来てくれました。研究を担当した24人のうち3人が国

シリーズ「南極にチャレンジする女性たち」第7回

南極での経験を中高生の理科教育に活用 東野 智瑞子(第59次南極地域観測隊 越冬隊員) 45歳の誕生日に-20℃の中、着物で記念撮影 インタビューは2017年10月19日に、東京都立川市の国立極地研究所で行いました。写真は、2019年1月に昭和基地の東野隊員からメールで送られてきたものです。 越冬隊員を目指した動機 福西:本日は南極への出発準備でお忙しい中、インタビュー時間を作ってくださりありがと

いまや熱い北極海

小島 覚(北極圏生態学者、元東京女子大学教授) 北極というと多くの皆さんは、それは地球の北の果て、住む人もなく一年中雪と氷に閉ざされたところ、私たちとは何のかかわりもない世界と思っているのではないでしょうか。 ところがいま北極は、世界中の熱い視線が注がれているいわば世界のホットスポットともなっている所なのです。それは、これまで一年中、北極海全域を閉ざして溶けることのなかった海氷が、気候温暖化にとも

シリーズ「極地からのメッセージ」 第13回

極北の地、ティクシにて 神保美渚(北海道大学大学院獣医学院博士課程) ロシア連邦サハ共和国の首都ヤクーツクから小さなジェット機で飛び立ち、だだっ広い空港に降り立った。すぐに別室に通され、ミリタリー姿の係員にあれやこれやと質問される。「なにしに来たの?」「いつまでいるの?」「変なものもってない?」「ここに冬に来た日本人は初めてだよ!」 写真1.調査中の一枚。雪の反射がまぶしい。 2017年3月、私は

ロシア北極域の経済発展を考える

田畑 伸一郎(北海道大学スラブ・ユーラシア研究センター 教授) 1.資源開発と先住民 私は、文科省の北極域研究推進プロジェクト(ArCS)のテーマ7「北極の人間と社会:持続的発展の可能性」のなかで、ロシア北極域の持続的経済発展に関する研究を行っている。よく知られているように、ロシア経済は、石油・ガスに大きく依存する。石油・ガスは、連邦財政収入の4割強を提供し、輸出の5割以上を占める。そして、その石