シリーズ「南極観測隊の生活を支える技術」

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シリーズ「南極観測隊の生活を支える技術」第4回

雪氷上滑走路 国立極地研究所極地工学研究グループ 石沢 賢二 1.南極点への初飛行 1903年(明治36年)のライト兄弟の初飛行から26年後の1929年(昭和4年)11月29日、米国のリチャード・バードは、南極点上空から米国国旗を落下し南極での米国の存在をアピールしました。上空からとはいえ南極点に到達したのは1912年(明治45年)のスコット以来の出来事でした。英国人のスコットは、ノルウェーのアム

シリーズ「南極観測隊の生活を支える技術」第3回

橇(そり) 国立極地研究所極地工学研究グループ 石澤 賢二 2トン積み木製橇 日本の第1次南極観測隊を乗せた砕氷船「宗谷」が南極に向かう1年前の昭和30年(1955年)の初夏、西堀越冬隊長は、橇の試作を依頼するため高速艇などを製作していたある小さな会社を訪れました。西堀さんの要求は、南極の荒れた氷原で使う2トン積み橇を重量200kg以下で作ってもらいたいというものでした。その会社で設計を担当した堀

シリーズ「南極観測隊の生活を支える技術」第2回

雪氷を利用した構造空間 国立極地研究所極地工学研究グループ 石澤 賢二 内陸基地での構造空間の確保 氷床上にある内陸基地で活動するには、居住施設などの建物を始め、発電機室、造水槽、倉庫、実験室など様々な空間が必要です。このような空間を簡易に得るには、雪洞を掘って屋根掛けすることです。しかし、雪は時間とともに変形する塑性的性質を持つやっかいな物質です。屋根の上に溜まった雪粒はお互いに結合して大きな力

飲料水(その1)

ーシリーズ「南極観測隊の生活を支える技術」第1回ー 石澤 賢二(国立極地研究所極地工学研究グループ)   地球上の淡水は南極に集中 私たちの地球にはおよそ14億km3の水があると言われています。そのうち、約97%が海水で淡水は3%しかありません。淡水の内訳は、図1に示すとおり、氷河・氷床が約70%で断然多く、そのほとんどが南極大陸に存在する氷です。地下水が30.1%、私たちがふだん飲料水

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