シリーズ「南極観測隊〜未知への挑戦」

シリーズ「南極観測隊~未知への挑戦」 第5回

地震アレイ観測現場から 第56次夏隊員・第58次越冬隊員 中元 真美 東オングル島内水準測量の手伝い。背景に映るのは接岸した南極観測船「しらせ」と南極大陸。  「南極に行ってみる気はあるか?」そう問われ私が初めて南極行きを意識したのは博士論文提出を翌年春に控えた秋のことでした。昔からただ漠然と南極に興味を持っていたので軽い気持ちで行きたいと返事をしていました。それから年が明け2月、改めて参加意思を

シリーズ「南極観測隊〜未知への挑戦」 第4回

南極オゾンホールの発見-最初の出会い 第23次南極地域観測隊員 忠鉢 繁 はじめに  南極オゾンホールは、8月から9月ごろ南極上空に出現し、12月頃には一度消える。そして翌年の8月から9月ごろまた出現する。これを毎年繰り返す。現在は毎年観測されているこの現象を、我々第23次日本南極地域観測隊が1982年に昭和基地で越冬中に観測し、1984年にギリシャで開かれた国際会議(オゾンシンポジウム)で発表し

シリーズ「南極観測隊〜未知への挑戦」 第3回

南極海に中深層巨大生態系はあるか? 国立極地研究所名誉教授 内藤 靖彦 科学・技術が高度に発達した21世紀は宇宙の時代と言われています。お蔭で、我々は月の裏側から宇宙の果てまでも、さらには宇宙から地球の隅々までも見渡すことができます。まさに我々は宇宙の時代に生きているといえるでしょう。面白いことに、多くの宇宙飛行士は宇宙から見た地球は「青い」と感動しています。遠くから見ると「地球は青い」ということ

シリーズ「南極観測隊〜未知への挑戦」第2回

雲はつかめるかー採餌記録計のはなし 国立極地研究所名誉教授 内藤 靖彦 近年ヒトが排出するCO2のために気候が大きく変わった。その影響は海洋の生き物にも及んでいる。そして海洋生態系もこの影響を受けている。ここでは海洋生態系と一言で済ましているが、その中身は極めて複雑である。簡単にいうと海洋で生活するすべての生き物の「食いつ食われつ」の相互関係が変わるという話である。とは言っても、膨大な量の海洋生物

シリーズ「南極観測隊〜未知への挑戦」第1回

大型大気レーダー“PANSY”への挑戦 三菱電機株式会社 伊藤 礼  私は、第53次越冬隊と、第56次夏隊の2回にわたりPANSYのシステム構築のため、三菱電機から南極地域観測隊へ参加した。  52次隊から建設の始まったPANSYであるが、苦節5年を経て、今次56次隊でようやく全システム構成完成という節目を迎えることができた。技術者として、完成の瞬間に立ち会えたことを大変光栄に思う。諸先輩方のご尽