メールマガジン 第2号(2015年7月1日発行)

シリーズ「南極・北極研究を支える企業探訪」第1回

ミサワホーム株式会社 代表取締役専務執行役員 平田俊次氏 日本の南極地域観測事業は1957年1月の昭和基地開設で始まりましたが、多くの企業が、厳しい南極の自然に耐える建物、設備、機械、装備品、食料品等の開発に果敢に挑戦し、世界に誇る性能をもつ製品を短期間に作り出しました。建築では、プレハブ建築技術の発展に南極が大きな貢献をしました。最初に建設された建物は、気温マイナス50度、風速60メートルに耐え

シリーズ「南極観測隊〜未知への挑戦」第1回

大型大気レーダー“PANSY”への挑戦 三菱電機株式会社 伊藤 礼  私は、第53次越冬隊と、第56次夏隊の2回にわたりPANSYのシステム構築のため、三菱電機から南極地域観測隊へ参加した。  52次隊から建設の始まったPANSYであるが、苦節5年を経て、今次56次隊でようやく全システム構成完成という節目を迎えることができた。技術者として、完成の瞬間に立ち会えたことを大変光栄に思う。諸先輩方のご尽

シリーズ「南極観測隊エピソード」第1回

南極観測と朝日新聞その1 元朝日新聞社会部記者 柴田鉄治 南極観測と朝日新聞社との関係は、明治時代に朝日新聞社が白瀬南極探検隊を支援したことに始まる。 白瀬矗(しらせのぶ)という人は、秋田県金浦村(現・秋田県にかほ市)のお寺の住職の息子で、子どものころ寺子屋のお師匠さんからコロンブスやマゼランら探検家の話を聞いて、自分も探検家になろうと決心した。目指すは北極圏。そのため、熱いお茶やお湯は飲まない、

シリーズ「南極観測隊の生活を支える技術」第2回

雪氷を利用した構造空間 国立極地研究所極地工学研究グループ 石澤 賢二 内陸基地での構造空間の確保 氷床上にある内陸基地で活動するには、居住施設などの建物を始め、発電機室、造水槽、倉庫、実験室など様々な空間が必要です。このような空間を簡易に得るには、雪洞を掘って屋根掛けすることです。しかし、雪は時間とともに変形する塑性的性質を持つやっかいな物質です。屋根の上に溜まった雪粒はお互いに結合して大きな力

シリーズ「南極観測隊員が語る」第1回

念願の南極昭和基地 第55次南極地域観測隊 水田 裕文 南極へ行ってみたい。そう思ったのは今から7年前の2008年。NECネッツエスアイ(入社当時はNECシステム建設)に入社後、システムエンジニアとしてキャリアを積んでいたが、社内公募に南極越冬隊の項目があったので素早く反応してしまった。よく、なぜ南極に?と聞かれることがあるが、理由は簡単、『行ってみたいから』。何があるか、どんなことが起こるかわか

シリーズ「最新学術論文紹介」第2回

無人航空機による航空磁気測量 国立極地研究所名誉教授 渋谷 和雄 1. はじめに 無人飛行機は軍用(weapon delivery)から発達した技術であるが、空中写真撮影用途で民間での利用が拡大した。静止物体をアトランダム(無作為)でも多方面から部分的に重なるように撮影していれば、対象物のデジタル地形モデルが作れるので地理情報システム(GIS)への応用という面では小型模型飛行機レベルで良いのが魅力

シリーズ「南極・北極研究の最前線」第2回

南極の気候変化とペンギン 国立極地研究所准教授 高橋 晃周 「南極の気候変化がもたらす影響」という話題になると、必ず登場するのがペンギンである。南極の温暖化でペンギンが困っている、といった調子の報道を目にすることが多いが、実際のところはどうなのだろうか?南極のペンギンの個体数変化の現状をご紹介したい。 まず南極にどんな種類のペンギンがいるのか、ご存知の方も多いと思うが、おさらいしよう。南極に大きな

シリーズ「最新学術論文紹介」第1回

コンピュータシミュレーションでオーロラ爆発の謎に迫る 国立極地研究所准教授 片岡 龍峰 右を見ても左を見ても乱舞しているオーロラを目の当たりにして立ち尽くしていると、その美しさと複雑さに圧倒されてしまう。オーロラの徹底的な謎解きというのは、まだ人間にとって難しすぎる問題なのではないか、と安直に考えてしまいそうになるのは私だけではないはずだ。実際、およそ半世紀にわたる国際協力によって、宇宙からの「そ

シリーズ「極地からのメッセージ」第2回

地球最北の犬ぞり猟に同行して 朝日新聞特別報道部記者 中山由美 果てしなく続く純白と青い空がまじわる彼方、「雪平線」そんな言葉が浮かぶ。さえぎるもの一つない氷床は南極大陸を思い出させる。北極・グリーンランド北西、10頭の犬にひかれて半月、約600キロを走った。「地球最北の村」シオラパルクに暮らす大島育雄さん(68)の犬ぞり猟に4月、同行した。 大島さんは1972年にこの地へ渡り、猟師として生きてき

シリーズ「南極・北極の自然環境」第1回

最近の南極リュツォ・ホルム湾の海氷状況~「しらせ」砕氷航行の厳しさの一因は多雪にあり~ 国立極地研究所准教授 牛尾 収輝 2009年に就航した砕氷船「しらせ」(二代目)は、昨年の第56次行動で南極航海6回を数え、そのうち第53次(2011/12シーズン)と第54次(2012/13シーズン)では昭和基地への接岸を断念した。その後、55次と56次行動では苦難の末に基地接岸を果たした。特に56次往路定着