シリーズ「南極・北極研究の最前線」

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シリーズ「南極・北極研究の最前線」第6回

南極湖沼、何を探ったら(もっと)面白いのか? 国立極地研究所准教授 工藤 栄 2014年に出版されたLaybourn-Parry and Wadham「Antarctic Lakes」でまとめられている議論を元に、自分なりの考えをまとめてみた。 1.南極湖沼の概論 南極大陸はその面積のおよそ98%の氷床で覆われ、2世紀ほど前までは人間活動の全くない隔離された寒冷な大陸である。大陸縁辺や内陸部の限ら

シリーズ「南極・北極研究の最前線」第5回

衛星によるオーロラ研究の現場から 国立極地研究所助教 西山 尚典 はじめに: 極域の夜空を舞うオーロラは,太陽と地球間の相互作用の結果流入するエネルギーが,高度100-300 kmの地球大気で光へと変換される現象だと理解することができます.オーロラ現象のさらなる理解のために,南極昭和基地では1957年の第1次観測隊による目視観測から,現在まで連綿とオーロラの地上観測が続けられてきています.図1に代

シリーズ「南極・北極研究の最前線」第4回

メルツ氷河の崩壊が全球スケールの海洋循環に与えた影響 国立極地研究所助教 田村 岳史 近年、南極大陸上の氷床・氷河の融解・崩壊が激しい。この原因としては、自然に起こる水循環の一環、あるいは近年の地球温暖化によるものが考えられるが、いずれにせよ、全球海面水位上昇に直接、結びつく重要な現象であり、大きな注目を集めている。一方、氷床・氷河の融解・崩壊は、海面水位上昇以外にも思わぬ影響を与えており、その具

シリーズ「南極・北極研究の最前線」第3回

隕石研究の現場から 国立極地研究所助教 山口 亮 1969年、日本南極地域観測隊(JARE)によって、やまと山脈付近の氷床上で9個の隕石が発見された。その後の南極探査により、氷床上の一部(裸氷帯)に隕石が集まっているという事実が明らかにされた。JAREでは、最初の発見や他のプロジェクトの付随的な探査を含めると、これまで23回の隕石探査が行われた。国立極研究所は、世界最大級の隕石コレクションを保有し

シリーズ「南極・北極研究の最前線」第2回

南極の気候変化とペンギン 国立極地研究所准教授 高橋 晃周 「南極の気候変化がもたらす影響」という話題になると、必ず登場するのがペンギンである。南極の温暖化でペンギンが困っている、といった調子の報道を目にすることが多いが、実際のところはどうなのだろうか?南極のペンギンの個体数変化の現状をご紹介したい。 まず南極にどんな種類のペンギンがいるのか、ご存知の方も多いと思うが、おさらいしよう。南極に大きな

急変する北極
~GRENE 北極気候変動研究事業(2011ー2015年度)~

ーシリーズ「南極・北極研究の最前線」第1回ー 山内 恭(国立極地研究所特任教授) —GRENE 北極気候変動研究事業(2011—2015年度)— 近年、北極は地球温暖化に伴う夏の海氷域の急減、地上気温の急上昇、氷河の縮小、永久凍土の融解など、様々な気候・環境の変化が起こり、単に科学的な側面ならず、社会的にも大いに注目される様になってきた。図1に、地球全体の気温の変化と併せて北極の気温変化を示してい