アラスカ徒然日記
- 2022.03.24
- 極地研究振興会 Webマガジン
- シリーズ「アラスカ徒然日記」
2021年年末フェアバンクスを襲ったスノーストームと大規模な停電
八重樫あゆみ
クリスマス直前の12月23日、天気予報を見ていた私は思わずニ度見してしまった。12月26日朝までに、積雪予想60センチ強。その後まさかの大雨予報。本当にそんなものが降るのか?真冬のフェアバンクスで…?予報が大きくブレただけなんじゃないのか?
皆、戦々恐々としており、Facebook内でも不安を 抱く人々の投稿が散見された。
やってきた冬の嵐
26日早朝。何かが窓に打ち鳴らすような轟音で目が覚める。見ると、夜が明けたばかりのうっすらとした空から降ってくる、大粒の雨?氷?それともみぞれ…とにかくそれは、聞いたこともないような音で、窓ガラスを激しく叩きつけていた。
後にそれはFreezing rain(着氷性の雨、水滴のまま降ってきて接地すると凍る雨のこと)だったことがわかった。午後の早い時間に降雨は落ち着いたが、予想通り、市内は大規模な停電に見舞われた。
大規模停電への備えと対策
私の住むマーフィードーム近郊では、フェアバンクスの市街地から車で20分ほどの距離である。今回、広範囲での停電は主に、街の中心部をぐるりと囲んだほぼ全ての地域で発生したらしい。普段、大きなスノーストームが来る場合、割と気温が上がることが多い。上がるといっても、マイナス一桁台ではあるが。暖房を全て電気に頼っている家では寒さに震えることにもなりかねない。
幸いにも、私の自宅には発電機が3台ほどあり、そのうちの1台をフル稼働させ、暖房、冷蔵庫、そして、必要最低限の明かりを確保することができた。ただ井戸の水を汲み上げるポンプの電圧が合わず、発電機を取付けられなかったのは辛かった。電気と水のない一夜を明かし、ほぼ丸一日を経た翌日の午後3時ごろ、ようやく電気が回復した。今回の大規模停電では、山の奥のほうなどでは実に6日間の停電になったところもあったらしい。
こういった災害時に強いのは、普段もライフラインを公のものに頼らず、自家発電、井戸、薪ストーブなど、自分自身の力で生活する術を兼ね備えた家なのだろう。
実際、3年ほど前まで住んでいた小さなログキャビンでは、暖房は薪ストーブのみ、電線は通っていないのでソーラーパネルと発電機を使った発電、生活用水は街から買ってきてタンクに貯める、といった生活だった。そのため、スノーストームでの広範囲の停電となっても、全く影響はなかった。
スノーストームが通り過ぎて・・・
今、そのスノーストームの日から2週間が経とうとしているが、停電の復旧や除雪等はほぼ行われたものの、大量の雨が降った影響で、道路の上にパッチ状に氷の層が厚み5センチほどできているところがかなり多くあり、酷い道路状況が続いている。山中も大雪でムースが歩けず、町中に出没することが普段より多くなっているらしい。道路上の分厚いアイスバッチと、突然出没するムースに気をつけながら、今日ものろのろガタガタ、安全運転をしている。
執筆者紹介
プロフィール
八重樫 あゆみ
米国アラスカ州フェアバンクス在住のオーロラ写真家。オーロラに惹かれ、2007年よりアラスカへ通い始める。大学院生時代、東北大学理学研究科で 2 年間のオーロラ研究を経験する。専門は超高速で明滅するフリッカリングオーロラ。その後、2014 年にアラスカへ移住。現在は二児の母として子育てに奮闘しながら、写真家やツアーガイドとして活動している。