第62次南極観測隊長のミニレポート➁「いよいよ南極大陸に到着!」

 

 橋田 元

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橋田隊長プロフィール

今回は第弾!
「いよいよ南極大陸に到着!」

【 記事・写真提供:国立極地研究所(@kyokuchiken)】

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2020年12月13日 ~白夜に突入!~

昨晩“しらせ”は流氷縁に到達し、日中は流氷が点在する氷海を航行した。

日中と言ってもこの日から白夜に入ったのでしばらく夜はない。徐々に海氷の密接度が高まり、凪いだ氷海は鏡のようだ。

“旅する版画家” ヨルク・シュマイサーは、1998年に豪州南極観測隊の芸術家プログラムのメンバーとしてデービス・モーソン両基地を訪問し、氷山、海氷、氷海などを精緻なエッチングや版画、パステルに描いた。

” Breaking the Ice” と題された巡回展が日本で開催された折、インタビューで残した言葉は、今、眼にしている風景そのものだ。


All icebergs are fresh water and they can be hundreds of kilometers long, or much smaller, strangely shaped, in colors ranging from emerald green to light cobalt blue or an exquisite white.

An artist in a land of ice and snow, ROGER PULVERS, Oct 29, 2003, The Japan Times.


2020年12月14日 ~例えるならサバイバルアスリート?~

サバイバルアスリートとでも例えればよいのだろうか。

バイオロギングなどの手法による研究成果から、海氷域という極限環境に適応した採餌戦略や季節移動など、アデリーペンギンの驚くべき生態が次々と明らかにされている。

氷上でのコミカルに見えるしぐさからは、その強靭な姿は想像すらできない。

定着氷への侵入前、遠方の氷盤上に見えた3羽の会話が聞こえるようだった。

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1)ほぉ~、先輩が話していた“しらせ”かぁ。見に行こうよ!
2)やっぱり近づかないほうがいんじゃないかな…
3)ねぇねぇ、大丈夫だと思うよ!
4)どれどれ、ふぁぁ、大きいねぇ!

2020年12月19日 ~昭和基地に到着!~

約7年振りの昭和基地へ。陸地から海氷に出る際の注意事項についてレクチャーを受ける。

海氷は盤石に見えるが、潮汐により数mの上下動を繰り返し、陸地
と接する部分に多数のクラックが生じて危険だ。
ふと、雪面を見ると、私達よりも先に、昭和基地を訪れてた者がいたようだ。

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2020年12月19日 ~昭和基地でのお正月🎍~

大晦日に「しらせ」に移動して年を越す。 初詣、お雑煮、鏡開き、おせちなど趣のある正月を迎えることができた。(続) 空は低い雲に覆われ、弱い風で小雪が降る中、明日からの作業に備え昭和基地に戻った。獅子も雪も舞う元旦に、無病息災を願う。(終)

📸獅子が舞う(JARE62大友隊員撮影)

📸雪が舞う(JARE62橋田隊長撮影)

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※2022年9月5日(月)公開予定です!


執筆者紹介

橋田 元

南極観測センター副センター長(観測担当)、国際・研究企画室副室長、COMNAP(南極観測実施責任者評議会)副議長

第62次南極地域観測隊では隊長(兼夏隊長)をつとめた。