大型大気レーダー“PANSY”への挑戦 三菱電機株式会社 伊藤 礼 私は、第53次越冬隊と、第56次夏隊の2回にわたりPANSYのシステム構築のため、三菱電機から南極地域観測隊へ参加した。 52次隊から建設の始まったPANSYであるが、苦節5年を経て、今次56次隊でようやく全システム構成完成という節目を迎えることができた。技術者として、完成の瞬間に立ち会えたことを大変光栄に思う。諸先輩方のご尽
南極観測と朝日新聞その1 元朝日新聞社会部記者 柴田鉄治 南極観測と朝日新聞社との関係は、明治時代に朝日新聞社が白瀬南極探検隊を支援したことに始まる。 白瀬矗(しらせのぶ)という人は、秋田県金浦村(現・秋田県にかほ市)のお寺の住職の息子で、子どものころ寺子屋のお師匠さんからコロンブスやマゼランら探検家の話を聞いて、自分も探検家になろうと決心した。目指すは北極圏。そのため、熱いお茶やお湯は飲まない、
雪氷を利用した構造空間 国立極地研究所極地工学研究グループ 石澤 賢二 内陸基地での構造空間の確保 氷床上にある内陸基地で活動するには、居住施設などの建物を始め、発電機室、造水槽、倉庫、実験室など様々な空間が必要です。このような空間を簡易に得るには、雪洞を掘って屋根掛けすることです。しかし、雪は時間とともに変形する塑性的性質を持つやっかいな物質です。屋根の上に溜まった雪粒はお互いに結合して大きな力
念願の南極昭和基地 第55次南極地域観測隊 水田 裕文 南極へ行ってみたい。そう思ったのは今から7年前の2008年。NECネッツエスアイ(入社当時はNECシステム建設)に入社後、システムエンジニアとしてキャリアを積んでいたが、社内公募に南極越冬隊の項目があったので素早く反応してしまった。よく、なぜ南極に?と聞かれることがあるが、理由は簡単、『行ってみたいから』。何があるか、どんなことが起こるかわか
ーシリーズ「南極観測隊の生活を支える技術」第1回ー 石澤 賢二(国立極地研究所極地工学研究グループ) 地球上の淡水は南極に集中 私たちの地球にはおよそ14億km3の水があると言われています。そのうち、約97%が海水で淡水は3%しかありません。淡水の内訳は、図1に示すとおり、氷河・氷床が約70%で断然多く、そのほとんどが南極大陸に存在する氷です。地下水が30.1%、私たちがふだん飲料水