シリーズ連載

サイエンスシリーズ「オーロラから宇宙環境を知る」第3回

地磁気の永年変化と南北磁極の移動福西 浩(東北大学名誉教授) 太陽風から地球を守る磁気圏  地球は巨大な磁石になっており、この磁石が太陽コロナから吹き出す太陽風 (超音速のプラズマの流れ)を守る磁気シールドになっています。太陽風は地球の磁場を閉じ込めて磁気圏を作り出します。磁気圏は、太陽方向は圧縮された形になり、反対側は尾を引いた形になっています(図1)。 この磁気圏の中でオーロラ粒子(主に高エネ

サイエンスシリーズ「オーロラから宇宙環境を知る」第2回

宇宙から見たオーロラと地上から見たオーロラ福西 浩(東北大学名誉教授) 宇宙からみたオーロラ  オーロラは高度約100~500kmの非常に希薄な大気が発光する現象です。最もよく見られるオーロラは、酸素原子が発光する緑色のオーロラと赤色のオーロラです。緑色オーロラの発光領域は高度約100~250kmで、それより高い高度は赤色オーロラの発光領域です。国際宇宙ステーション(ISS)の高度は約400kmな

サイエンスシリーズ「オーロラから宇宙環境を知る」第1回

太陽黒点11年変動とオーロラ活動 福西 浩(東北大学名誉教授)  オーロラは、地上約100kmよりも高い宇宙空間と呼ばれる領域で希薄な大気が輝く現象です。地上付近の大気圧は1気圧ですが、高度が高くなるにつれて大気圧は急激に下がり、高度100kmでは地上の300 万分の1まで下がります。このような希薄な大気では大気中の酸素分子(O2)や窒素分子(N2)は太陽紫外線で酸素原子(O)や窒素原子(N)に分

シリーズ「極地からのメッセージ」第16回

三度目の南極へ 中山由美(朝日新聞社会部記者) 2019年7月26日、第61次南極地域観測隊の訓練に同行して瑞牆山に登頂  「もう二度と、この景色を見られないんだ」。飛び立つヘリコプターの窓から昭和基地を見下ろしながら、熱いものがこみ上げてきた――。1年2カ月暮らした南極を離れる瞬間、小さくなっていく基地の景色は、今も記憶に鮮明だ。2005年2月、私は45次隊で初めての越冬を終えた。  「最初で最

シリーズ「極地からのメッセージ」第15回

「北極圏を目指す冒険ウォーク」に挑戦して 西郷琢也(チームメンバー) きっかけは、私が働く大塚倉庫が昨年4月、北極冒険家の荻田泰永さんを招いて、社内で講演会を開いたことでした。講演で荻田さんは自身の経験などを語り、「来年は若者を連れて北極に行こうと思っている」と話しました。そのとき何かハッとするものを感じ、講演会が終わったタイミングで「連れて行ってください」というメッセージと、氏名、連絡先のみを記

シリーズ「極地からのメッセージ」 第14回

南極点の先にあるもの 南極冒険家 阿部雅龍 南極点、ロボットaiboと一緒に  南極点へ向け、独り歩く。ソリが進まない。引くたびに100キロのソリが全て雪に潜る。こんな積雪の事例は聞いた事がない。一歩進む度にスキーが膝まで埋まる。南極で膝ラッセルなんて想定外だ。遅々としてペースは伸びない。このまま行くと食料が尽きる。自然の理不尽さに心から不条理を感じる。余裕で南極点まで着ける予定だった。そのプラン

シリーズ「極地からのメッセージ」 第13回

極北の地、ティクシにて 神保美渚(北海道大学大学院獣医学院博士課程) ロシア連邦サハ共和国の首都ヤクーツクから小さなジェット機で飛び立ち、だだっ広い空港に降り立った。すぐに別室に通され、ミリタリー姿の係員にあれやこれやと質問される。「なにしに来たの?」「いつまでいるの?」「変なものもってない?」「ここに冬に来た日本人は初めてだよ!」 写真1.調査中の一枚。雪の反射がまぶしい。 2017年3月、私は