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シリーズ「南極・北極研究の最前線」第14回

ウェッデルアザラシの越冬生態の調査 國分亙彦(国立極地研究所助教 第58次南極地域観測隊越冬隊員) 高次捕食動物と南極の海洋環境  私は58次越冬隊員として2016年12月から2018年2月まで昭和基地に滞在してウェッデルアザラシの生態を調査してきた。生物分野の隊員が昭和基地で越冬観測をするのは稀であり、今回は45次隊以来、13年ぶりである。冬は一般的に生物の活動性が低下する時期であり、この時期を

第61次隊、越冬はじめました

青山雄一(第61次南極地域観測隊 越冬隊長) 例年とちょっと異なる夏期間  第61次南極地域観測隊は、青木隊長を筆頭に89名の隊員・同行者で構成される。そのうち、しらせ及び南極昭和基地周辺で活動をする本隊が67名、しらせ以外の手段で南極に行き活動を行う別動隊が22名である。第61次隊では、急速な氷床の融解や後退が危惧され、国際的に注目されているトッテン氷河域での氷床―海洋の相互作用調査を計画の中心

シリーズ「南極観測隊エピソード」第19回 南極観測と朝日新聞

韓国からのオブザーバーと同室で南極に向かう 柴田鉄治(元朝日新聞社会部記者)  私が新聞社を定年退社し、関連企業、さらには大学の客員教授も終えた70歳のとき、「もう一度、南極へ行こう」と思い立ち、40年ぶりの南極行が実現した話は前回までに記した。7次隊から47次隊と、40年の間に記事の送り方が大きく変わったため、45次越冬隊に同行した中山由美記者と武田剛カメラマンの指導を受けて、カメラもパソコンも

昭和基地のアマチュア無線局

小林正幸((公財)日本無線協会、第25次、第46次南極越冬隊員) はじめに  「アマチュア無線」と言っても、携帯電話やスマートフォンという無線装置を自由に使いこなしている最近の若い人にはピンとこないと思います。誰かと話したり、インターネットを利用したりするのに、有線とか無線とかを意識する必要がないほど無線通信は日常生活に浸透しています。これら無線を使った装置は、使用する目的に合った電波(周波数)を

東京海洋大学「海鷹丸」による南大洋観測航海

茂木正人(東京海洋大学 海洋環境科学部門 准教授)  今年も行ってきました。東京海洋大学「海鷹丸」は、近年ほぼ毎年南極海での観測を行っており、この航海が23回目でした。2020年1月8日に西オーストラリア・フリマントルを出港し、タスマニア・ホバートに戻ってくる28日間の航海です。「海鷹丸」は練習船で、南大洋観測航海も実習航海の一部区間で行われます。したがって、毎年40名程度の、航海・操船を学ぶ実習

南極・北極から地球の未来を考えるSDGs/ESD事業のご紹介

福西 浩(公益財団法人 日本極地研究振興会 常務理事)  2015年9月の国連サミットで採択された「持続可能な開発目標(SDGs)」(図1)は、2016年から2030年の15年間で達成するために掲げた17の目標です。地球上の「誰一人取り残さない」ことを誓っています。我が国でも経済界や地域社会などすべての分野でSDGsへの取り組みが始まっています。SDGs達成のためにはそれを担う人材の育成が緊急の課

国立極地研究所のニーオルスン新観測基地が完成

兒玉裕二(国立極地研究所 国際北極環境研究センター特任教授) 国立極地研究所は、ノルウェーのスバールバル諸島ニーオルスン(Ny-Ålesund)(図1)に恒久的な観測基地を1991年から設置し、国内外の研究機関と協力しながら北極圏の自然環境に関する様々な分野の研究を進めています。これまで使用していた建物の老朽化に伴い、各国の基地や施設が集まっているニーオルスン中心部に新研究棟Kings Bay V

南極で気温20.75℃は温暖化か?

山内 恭(国立極地研究所特任教授)  標記の報道が本年(2020年)2月末から3月初めにかけて各種マスコミに流れました。多分、最初の記事は、イギリスGuardian紙の記事で(https://www.theguardian.com/world/2020/feb/13/antarctic-temperature-rises-above-20c-first-time-record )、ほぼ皆、この記事