研究

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シリーズ「南極・北極研究の最前線」 第9回

日本ベルギー共同隕石探査 国立極地研究所助教 今栄 直也 探査の概要  日本とベルギーとの共同隕石探査は、これまで、第51次夏隊 (2009-2010年)、BELARE (2010-2011年)、第54次夏隊 (2012-2013年)の3回実施され、合計1200個ほどの隕石採集に成功している。地圏研究グループが中心となりセールロンダーネ地域での地質・地形を主とする調査と隕石探査を第VII期(200

シリーズ「南極・北極研究の最前線」 第8回

地球最後の磁場逆転は従来説より1万年以上若かった 国立極地研究所助教 菅沼 悠介  過去の地磁気の変化は地層中に古地磁気記録として残される.従って,古地磁気記録を調べることで地磁気の極性が過去に何度も逆転を繰り返してきたことが明らかにされてきた.特に,最後に起こった地磁気の逆転は,「ブルン-松山境界」(Brunhes-Matuyama境界)と呼ばれる最も顕著な地質年代基準面の1つであるため,この境

シリーズ「南極・北極研究の最前線」第7回

JARE57重点研究観測-南極氷床上中層掘削- 櫻井俊光(国立極地研究所 特任研究員)  国立極地研究所(以下、極地研という)に赴任して1年が経とうとした頃に、第57次南極地域観測隊(以下、JARE57という)に参加することが決まった私にとって、はじめての南極、はじめての掘削である。このような私がメールマガジンに投稿させていただくことに恐縮するとともに、とても光栄に思う。  今回の掘削プロジェクト

シリーズ「南極・北極研究の最前線」第6回

南極湖沼、何を探ったら(もっと)面白いのか? 国立極地研究所准教授 工藤 栄 2014年に出版されたLaybourn-Parry and Wadham「Antarctic Lakes」でまとめられている議論を元に、自分なりの考えをまとめてみた。 1.南極湖沼の概論 南極大陸はその面積のおよそ98%の氷床で覆われ、2世紀ほど前までは人間活動の全くない隔離された寒冷な大陸である。大陸縁辺や内陸部の限ら

シリーズ「南極・北極研究の最前線」第5回

衛星によるオーロラ研究の現場から 国立極地研究所助教 西山 尚典 はじめに: 極域の夜空を舞うオーロラは,太陽と地球間の相互作用の結果流入するエネルギーが,高度100-300 kmの地球大気で光へと変換される現象だと理解することができます.オーロラ現象のさらなる理解のために,南極昭和基地では1957年の第1次観測隊による目視観測から,現在まで連綿とオーロラの地上観測が続けられてきています.図1に代

シリーズ「南極・北極研究の最前線」第4回

メルツ氷河の崩壊が全球スケールの海洋循環に与えた影響 国立極地研究所助教 田村 岳史 近年、南極大陸上の氷床・氷河の融解・崩壊が激しい。この原因としては、自然に起こる水循環の一環、あるいは近年の地球温暖化によるものが考えられるが、いずれにせよ、全球海面水位上昇に直接、結びつく重要な現象であり、大きな注目を集めている。一方、氷床・氷河の融解・崩壊は、海面水位上昇以外にも思わぬ影響を与えており、その具

シリーズ「南極・北極研究の最前線」第3回

隕石研究の現場から 国立極地研究所助教 山口 亮 1969年、日本南極地域観測隊(JARE)によって、やまと山脈付近の氷床上で9個の隕石が発見された。その後の南極探査により、氷床上の一部(裸氷帯)に隕石が集まっているという事実が明らかにされた。JAREでは、最初の発見や他のプロジェクトの付随的な探査を含めると、これまで23回の隕石探査が行われた。国立極研究所は、世界最大級の隕石コレクションを保有し

シリーズ「南極・北極研究を支える企業探訪」第2回

NECネッツエスアイ株式会社 20世紀後半から衛星観測技術が急速に発展し、各国は地球周辺の宇宙空間の直接観測や宇宙から陸域、海洋、大気を観測するための地球観測衛星を多数打ち上げました。そこでこれらの衛星から得られる大量データを受信する施設が南極地域でも必要になり、世界に先駆けて昭和基地に「多目的衛星データ受信システム」を建設するための予算として、1987年から3ヵ年計画で13億円が認められました。

シリーズ「南極・北極研究を支える企業探訪」第1回

ミサワホーム株式会社 代表取締役専務執行役員 平田俊次氏 日本の南極地域観測事業は1957年1月の昭和基地開設で始まりましたが、多くの企業が、厳しい南極の自然に耐える建物、設備、機械、装備品、食料品等の開発に果敢に挑戦し、世界に誇る性能をもつ製品を短期間に作り出しました。建築では、プレハブ建築技術の発展に南極が大きな貢献をしました。最初に建設された建物は、気温マイナス50度、風速60メートルに耐え

シリーズ「南極・北極研究の最前線」第2回

南極の気候変化とペンギン 国立極地研究所准教授 高橋 晃周 「南極の気候変化がもたらす影響」という話題になると、必ず登場するのがペンギンである。南極の温暖化でペンギンが困っている、といった調子の報道を目にすることが多いが、実際のところはどうなのだろうか?南極のペンギンの個体数変化の現状をご紹介したい。 まず南極にどんな種類のペンギンがいるのか、ご存知の方も多いと思うが、おさらいしよう。南極に大きな