新発見―オーロラ爆発でバン・アレン帯電子が高度65kmまで流入 片岡龍峰(国立極地研究所 准教授) オーロラ爆発の際に、メガ電子ボルトの電子が地球に降り注ぎ、上空65 km付近というオーロラよりも低い高度の大気を電離させていることが、南極昭和基地のPANSYレーダーなどを用いた研究により明らかになりました。昭和基地を取り囲む1000km四方で同様のことが起こっていると仮定すれば30万キロワット
小島 覚(北極圏生態学者、元東京女子大学教授) 北極というと多くの皆さんは、それは地球の北の果て、住む人もなく一年中雪と氷に閉ざされたところ、私たちとは何のかかわりもない世界と思っているのではないでしょうか。 ところがいま北極は、世界中の熱い視線が注がれているいわば世界のホットスポットともなっている所なのです。それは、これまで一年中、北極海全域を閉ざして溶けることのなかった海氷が、気候温暖化にとも
田畑 伸一郎(北海道大学スラブ・ユーラシア研究センター 教授) 1.資源開発と先住民 私は、文科省の北極域研究推進プロジェクト(ArCS)のテーマ7「北極の人間と社会:持続的発展の可能性」のなかで、ロシア北極域の持続的経済発展に関する研究を行っている。よく知られているように、ロシア経済は、石油・ガスに大きく依存する。石油・ガスは、連邦財政収入の4割強を提供し、輸出の5割以上を占める。そして、その石
南極氷床変動と固体地球の変形,地球回転変動の関係 国立極地研究所助教 奥野淳一 固体地球にとって氷床や海水は,表層に存在する荷重(重し)と見ることができる.固体地球は,全く変形しない剛体ではなく,瞬間的な力源に対しては弾性的に,長い時間スケールにおよぶ力源には粘性的に変形する性質をもつ.この性質が,氷床変動や海水準変動にともなう表面質量の再分配によって,固体地球の多様な時空間スケールの変形を引き
中央ドローニングモードランド、基盤岩体区分について 琉球大学教育学部教授 馬場壮太郎 地殻は地球表層部に分布し、大陸地殻と海洋地殻に区分される。大陸地殻は主に花崗岩質岩(下部は玄武岩質)と海洋地殻は玄武岩質岩などの岩石からそれぞれ構成される。大陸地殻は30km-60kmの厚さがあり、面積では約41%を占める。地球誕生後の初期地殻は日本列島のような島弧地殻であったと考えられており、その後離合集散と
南極における無人小型航空機(UAV)を用いた地形調査とその解析結果について 総合研究大学院大学 大学院生 川又 基人 1. UAVによる空撮と三次元形状計測技術 近年の地形学分野では無人小型航空機(Unmanned Aerial Vehicle:以下UAV)を使用した高解像度の地形情報取得が注目されている。UAVの搭載するカメラによる空撮と、撮影対象物の三次元形状を計測する技術(Structur
1998年3月25日 南極プレート内巨大地震周辺の海底構造 国立極地研究所教授 野木 義史 地震は、日本人が身近に感じる現象である。プレートテクトニクスの概念では、日本はプレートが沈み込む境界部の活動的な縁辺部に位置する。プレート・テクトニクスとは、地球の表面がプレートと呼ばれる何枚かの固い岩板で構成され、このプレートがマントル対流によって互いに動いているとする学説である。また、地球の表層は、大
日本ベルギー共同隕石探査 国立極地研究所助教 今栄 直也 探査の概要 日本とベルギーとの共同隕石探査は、これまで、第51次夏隊 (2009-2010年)、BELARE (2010-2011年)、第54次夏隊 (2012-2013年)の3回実施され、合計1200個ほどの隕石採集に成功している。地圏研究グループが中心となりセールロンダーネ地域での地質・地形を主とする調査と隕石探査を第VII期(200
地球最後の磁場逆転は従来説より1万年以上若かった 国立極地研究所助教 菅沼 悠介 過去の地磁気の変化は地層中に古地磁気記録として残される.従って,古地磁気記録を調べることで地磁気の極性が過去に何度も逆転を繰り返してきたことが明らかにされてきた.特に,最後に起こった地磁気の逆転は,「ブルン-松山境界」(Brunhes-Matuyama境界)と呼ばれる最も顕著な地質年代基準面の1つであるため,この境
JARE57重点研究観測-南極氷床上中層掘削- 櫻井俊光(国立極地研究所 特任研究員) 国立極地研究所(以下、極地研という)に赴任して1年が経とうとした頃に、第57次南極地域観測隊(以下、JARE57という)に参加することが決まった私にとって、はじめての南極、はじめての掘削である。このような私がメールマガジンに投稿させていただくことに恐縮するとともに、とても光栄に思う。 今回の掘削プロジェクト