シリーズ「南極さんぽ」

南極さんぽ-Oh the places we can go!-#4

 林 由希恵 PARADICE HARBOUR(パラダイス・ハーバー) 序章 私の学生時代の反抗期は激しかった…と思う。心の底から押さえられないほどの衝動で両親を毛嫌いした。この親から産まれてこなければよかったなど、今思えばなんであんなに、と猛省するほどの感情を持て余していた。私の態度に傷つきストレスから円形脱毛症をわずらってなお毎日お弁当を作り続けてくれた母。毎日学校の送り迎えを続けてくれた父。

南極さんぽ-Oh the places we can go!-#3

 林 由希恵 PORTAL POINT(ポータル・ポイント) 序章 1912年、いまから110年も前に白瀬矗が南極に上陸しその時の最南到達点から見渡す限りの一面を「大和雪原」と命名した。実際はその地点周辺は海にせり出す棚氷(海の上にせり出す氷河の氷)の上だったわけで、白瀬矗は一片の岩石も持ち帰れなかったことを悔やんだそうだ。白瀬矗は南極に上陸した、といえるのか?と多くの国際機関においていまだに審議

南極さんぽ-Oh the places we can go!-#2

 林 由希恵 BROWN BLUFF(ブラウン・ブラフ) ブラウン・ブラフの地図をみる 「鳥はどこにでもいるんだよ。陸海空どこにでも住むことができるし、食べ物のために地球を半周することもできる。でも、それは自由っていうわけではないんだよ。だから僕は鳥が好きなんだ。」―同じ船で働くフランス人の鳥類学者がそう言った。船がウシュアイアの港を出港してから、南アメリカ大陸と南極大陸の間にある荒波のドレイク海

南極さんぽ -Oh the places we can go!- #1

 林 由希恵 Neko Harbour(ネコ・ハーバー) 凍った斜面をなれない長靴で上ってきて上気した私の頬に冷たい風が心地よく感じる。眼下には海になだれ込む氷河と無数の氷山が浮かぶ入り江が見える。ホームに暮らす年老いた祖父はベッドの上から一言、「見てこい」と私を送り出した。はじめ眼前に広がる光景にキョロキョロと落ち着かなく動いていた私の目がそのうち一点に定まり、意識的にゆっくりと瞬きをするごとに