技術

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シリーズ「南極観測隊の生活を支える技術」 第7回

南極基地での廃棄物と汚水の処理 国立極地研究所極地工学研究グループ 石沢 賢二 1.南極に持ち込む物資と持ち帰る物資  1957年、日本の第1次越冬隊11人が昭和基地で生活を始めてから、途中3年間の中断はあったものの、来年2017年で南極観測は60年を迎えることになります。第1次隊の越冬物資は、150トンあまりでした。現在「しらせ」が毎年運ぶ重量は、コンテナ容器などを含めて約1,100トンです。こ

シリーズ「南極観測隊の生活を支える技術」第5回

雪の吹き溜まりから建物を守る 国立極地研究所極地工学研究グループ 石沢 賢二 1. 第1次隊の建物  第1次南極観測隊は昭和31年(1956年)11月に「宗谷」で南極に向けて出発しましたが、南極観測隊が使う建物を検討したのは、主に日本建築学会から選ばれた南極建築委員会の方々でした。強風への構造的な耐力や暖房の熱損失などを考慮し、図1のような斬新な案も検討されましたが、隊長・副隊長の強い要望もあり、

シリーズ「南極観測隊の生活を支える技術」 第5回

南極での風力発電機の利用 国立極地研究所極地工学研究グループ 石沢 賢二 1.第1次隊が持ち込んだ風力発電機 第1次隊が南極に出発する年の昭和31年2月、南極地域観測機械関係準備委員会が日本機械学会に発足しました。この組織は、南極特別委員会の協力要請により遅ればせながらできたもので、民間会社の協力を得て、機械関係のいっさいの企画・準備を行い、観測隊に様々な製品を持たせました。そこで決めた方針は、①

シリーズ「最新学術論文紹介」第3回

白瀬氷河下流の氷山を活用したGPSブイによる氷河流動と海洋潮汐の観測 国立極地研究所助教 青山雄一 東南極リュツォ・ホルム湾の最南部に流れ込む白瀬氷河 (図1a) は、 南極氷床で最も速く流動する氷流のひとつである。氷流は氷床の氷質量を海洋へ輸送し、全球的な海面上昇に作用する。そこで我々は、地球環境変動監視の一環として、GPSを活用した白瀬氷河流動の直接観測を実施してきた。今回、これらの観測結

シリーズ「南極観測隊の生活を支える技術」第4回

雪氷上滑走路 国立極地研究所極地工学研究グループ 石沢 賢二 1.南極点への初飛行 1903年(明治36年)のライト兄弟の初飛行から26年後の1929年(昭和4年)11月29日、米国のリチャード・バードは、南極点上空から米国国旗を落下し南極での米国の存在をアピールしました。上空からとはいえ南極点に到達したのは1912年(明治45年)のスコット以来の出来事でした。英国人のスコットは、ノルウェーのアム

シリーズ「南極観測隊の生活を支える技術」第3回

橇(そり) 国立極地研究所極地工学研究グループ 石澤 賢二 2トン積み木製橇 日本の第1次南極観測隊を乗せた砕氷船「宗谷」が南極に向かう1年前の昭和30年(1955年)の初夏、西堀越冬隊長は、橇の試作を依頼するため高速艇などを製作していたある小さな会社を訪れました。西堀さんの要求は、南極の荒れた氷原で使う2トン積み橇を重量200kg以下で作ってもらいたいというものでした。その会社で設計を担当した堀

シリーズ「南極・北極研究を支える企業探訪」第2回

NECネッツエスアイ株式会社 20世紀後半から衛星観測技術が急速に発展し、各国は地球周辺の宇宙空間の直接観測や宇宙から陸域、海洋、大気を観測するための地球観測衛星を多数打ち上げました。そこでこれらの衛星から得られる大量データを受信する施設が南極地域でも必要になり、世界に先駆けて昭和基地に「多目的衛星データ受信システム」を建設するための予算として、1987年から3ヵ年計画で13億円が認められました。

シリーズ「南極・北極研究を支える企業探訪」第1回

ミサワホーム株式会社 代表取締役専務執行役員 平田俊次氏 日本の南極地域観測事業は1957年1月の昭和基地開設で始まりましたが、多くの企業が、厳しい南極の自然に耐える建物、設備、機械、装備品、食料品等の開発に果敢に挑戦し、世界に誇る性能をもつ製品を短期間に作り出しました。建築では、プレハブ建築技術の発展に南極が大きな貢献をしました。最初に建設された建物は、気温マイナス50度、風速60メートルに耐え

シリーズ「南極観測隊の生活を支える技術」第2回

雪氷を利用した構造空間 国立極地研究所極地工学研究グループ 石澤 賢二 内陸基地での構造空間の確保 氷床上にある内陸基地で活動するには、居住施設などの建物を始め、発電機室、造水槽、倉庫、実験室など様々な空間が必要です。このような空間を簡易に得るには、雪洞を掘って屋根掛けすることです。しかし、雪は時間とともに変形する塑性的性質を持つやっかいな物質です。屋根の上に溜まった雪粒はお互いに結合して大きな力

シリーズ「最新学術論文紹介」第2回

無人航空機による航空磁気測量 国立極地研究所名誉教授 渋谷 和雄 1. はじめに 無人飛行機は軍用(weapon delivery)から発達した技術であるが、空中写真撮影用途で民間での利用が拡大した。静止物体をアトランダム(無作為)でも多方面から部分的に重なるように撮影していれば、対象物のデジタル地形モデルが作れるので地理情報システム(GIS)への応用という面では小型模型飛行機レベルで良いのが魅力

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