32年前の「南極あすか新聞」をデジタル化復刻版で出版
高木 知敬(市立稚内病院地域連携サポートセンター長) はじめに すでに30年以上もむかしのことだ。1987年2月、南極昭和基地から670㎞離れたセールロンダーネ山地の北麓に日本第3の基地が完成した。その名を「あすか」という。そこは大陸雪原上の標高930mにあり、山岳景観の優れた基地であったが、一方では夏季以外はほとんど毎日地吹雪をともなった強風が吹きまくる「嵐の大地」でもあった。 第26次南極観測
日本極地研究振興会のWEBマガジン
高木 知敬(市立稚内病院地域連携サポートセンター長) はじめに すでに30年以上もむかしのことだ。1987年2月、南極昭和基地から670㎞離れたセールロンダーネ山地の北麓に日本第3の基地が完成した。その名を「あすか」という。そこは大陸雪原上の標高930mにあり、山岳景観の優れた基地であったが、一方では夏季以外はほとんど毎日地吹雪をともなった強風が吹きまくる「嵐の大地」でもあった。 第26次南極観測
南極観測を支える海上輸送 その3 日本の南極観測船 石沢 賢二(国立極地研究所極地工学研究グループ) 1.国際地球観測年(IGY) 世界各国が国家事業として南極観測に力を入れだしたのは、国際地球観測年(International Geophysical Year)という、国際科学研究プロジェクトが契機でした。このプロジェクトは、1957年7月1日から1958年12月31日までの期間中に、オーロラ、
南極観測を支える海上輸送 その2 英雄時代以降の南極探検船 国立極地研究所極地工学研究グループ 石沢 賢二 1.ウェッデル海でのドイツの活動 1.1 フィルヒナー隊の苦闘 前回は、英国のシャックルトンが率いた「エンジュランス」号がウェッデル海で氷に閉じ込められ沈没した話を書きましたが、それに先立つ1911~1912年(明治44~45年)にも同じウェッデル海で閉じ込められた船がありました。ドイツの
南極観測を支える海上輸送 その1 南極・北極で活躍した耐氷船 前国立極地研究所極地工学研究グループ 石沢 賢二 1.はじめに 南極観測を行うのに欠かせないのは、何といっても輸送です。観測の成否は輸送に掛かっているといっても過言ではありません。このシリーズではこれまで、雪上車・トラクター・橇による陸上輸送と飛行機・ヘリコプターによる航空輸送について記述してきましたが、海上輸送については触れていませ
内陸氷床上基地の高床式建物とその維持 -その2 2000年以降の新しい考え方- 国立極地研究所極地工学研究グループ 石沢 賢二 1.はじめに 前回は、氷床上に建設した建物とスノードリフトとの壮絶な闘いについて説明しました。今回は、2000年以降に建てられた高床式建物について詳しく説明します。その一部は、このシリーズの第5回「雪の吹き溜まりから建物を守る」でも紹介しました。建物を雪面上部に維持する
内陸氷床上基地の高床式建物とその維持 -その1 雪による埋没との闘い- 国立極地研究所極地工学研究グループ 石沢 賢二 1.はじめに 南緯60度以南の南極圏で通年越冬し観測活動を実施している基地は、現在43か所あります(2017年3月末)。そのほとんどは、南極大陸沿岸や近傍の島の露岩に位置し、大陸内部の雪面上にあるのは、ほんのひと握りに過ぎません。主なところでは、米国が運用するアムンセン・スコッ
南極での小型航空機の利用 -その2 南極観測再開以降- 国立極地研究所極地工学研究グループ 石沢 賢二 1.はじめに 前回は、南極で活躍した第6次隊までの航空機について説明しました。表1はそれをまとめたものです。 第1次隊では、朝日新聞社所有の機体を借用しました。第2次隊のビーバー機が、第1次越冬隊員を「宗谷」に収容した感動的な映像は、皆さんも見たことがあるかも知れません。同時に15頭の犬が昭和基
南極での小型航空機の利用 -スコットの係留気球から「宗谷」搭載のセスナ機まで- 国立極地研究所極地工学研究グループ 石沢 賢二 1. はじめに 南極での探検や科学観測活動をするためには、何と言っても人員や物資の輸送がいちばん大事です。海には海氷が立ちはだかり、通常の船では太刀打ちできず、砕氷船が必要です。陸地では特殊な雪上車や橇が欠かせません。ところが、空に目を移すと、気温が低いだけで、通常の航
観測隊の内陸行動を支えた雪上車 国立極地研究所極地工学研究グループ 石沢 賢二 1. はじめに 南極大陸行動での命の綱は、雪上車です。日本隊は、かつて小型航空機を越冬運用し内陸でも活用したが、緊急事態が起きたとしても天候に左右されるため、現場に急行できるものではありません。そのため、行動中の最終的な拠り所は雪上車でした。いったん雪上車のキャビンに入れば、とりあえず強風と寒さから身を守ることができ
南極昭和基地での太陽エネルギー利用 国立極地研究所極地工学研究グループ 石沢 賢二 1. はじめに 昭和基地は南緯69度にあり、太陽高度も最大で40度と低いため、エネルギーとしての太陽光利用はあまり期待できないと思われがちです。しかし、年間の積算日射量は、日本国内と同等であり、夏期には東京の約3倍の量があります(図1)。 図1 昭和基地と東京の全天日射量 南極で日射量が大きい理由として第一にあ